20日目
「盤上遊戯ものとかどうよ?プロもいるような」
「現実に追い越されますよ?」
情報公開系、つまりはやり取りが全て互いに見て取れるようなゲームならば公平性が保てるわけでありまして、それによって競技性が保証されるがゆえに、勝負事として成り立つわけでありまして。ある意味運で勝てないわけでございますから、実は一般的には娯楽として成り立たないという厄介なジレンマがあるようでございますが。
「結構流行ってないか?」
「話題にする分にはそうですけれど、競技人口的にはどうなのでしょうね?」
強さ弱さがはっきりとしてしまうわけでありますから。勝てる人は勝ちますが、負ける人は、なかなか勝てない、遊びとしては熱中する要素が薄いのでしょうね。ジャイアントキリングが起こりにくいといえばわかりやすでしょうか?努力がそのまま勝率に比例しすぎるところに面白みがない、と言えるのでしょうかね?
「頑張ったら勝てるなら、楽しいのでは?」
「強者の理論ですね。苦労してまで楽しみたくない人も多いのでしょう」
さらに言うならば、頑張っても勝てないと言いますか、努力に際限がないように見えることが苦痛なのでありましょうかね?逆に言うならばそこに面白さを感じる方々にとってはハマる趣味であるのではと予想できるわけでございますが、息抜きに遊ぶには少し敷居が高いとも表現できそうですね。
「なるほど、では、運の要素も絡めると良いのでは?」
「公平性が問題になりますね、それに絡めて競技性も薄れるのでは?」
フェアじゃないという前提はかなりの忌避感を抱かせるわけでありますし、運の要素が強くなればなるほど、実力が軽く見られるとか競技そのものがあまり認められなくなるような傾向が見られますね。大会で優勝しても、運が良かったのですねで終わってしまうわけです。
「あー、まあ、運の要素が強すぎるとそうなるな」
「物語として描くならば、見せ方にもよります。ゲームの外にドラマを持ってくるとかも一つの手段でしょうね」
そもそもゲームのルールを丁寧に説明して、その試合そのものを楽しく見せることはこれはかなり難しい、のではないかなと予想するわけです。一つの手を打つ時にどのようなことを考慮しているのか、そもそもどのようにすれば有利局面を作ることができるのか、前提となる知識を全て詰め込んで解説して、展開しなければならないとなりますと、これはもうとてつもない紙面が必要になりかねず、読者にも根気を求めることになるわけでして。
「うわー、そりゃ無理、ってなるな普通」
「まあ、刺さる人には刺さる作品にはなりそうですが、ニッチですよね」
逆に一手づつ丁寧に解説しながら書かれる作品とか、一局で単行本くらいの厚みにはなりそうでありますから、文章を埋める点では楽といえば楽なのでありましょうが、双方の思考をだだ漏れにした文言を嬉々として読み込めるような層は少ないのではなかろうかなと、さらに言うとそれは、
「面白いのかな?」
「一般的ではないでしょうね」
それこそ書き方によるとは思いますが、一手ごとに回想シーンとか入れると面白いかもしれませんけれど……。
ああ、なるほど、思考の動きそのものを言語化することが難しい場合も多そうではありますね。
あーだこーだと盤上遊戯ネタを話していると、下校のチャイムが聞こえてきました。




