2日目
「そして時は流れ、100日目となった」
「早いですね」
新春二日目登校日、後期の授業本格開始で、少々頭と体がだるい気がします。寝不足なのは確かではありますが、読んでない本が積まれていると気になりますよね?
ぼんやりとした頭ですでに先人が潜んでいた部屋の扉を開けると、のっけから妄言が私を襲ったのです。勘弁してください。
「と、冒頭に書いたら驚く人もいるかなと」
「出落ち芸人ですか?」
奇妙な立ち姿で、こちらをどの角度から眺めているのでありましょうかね、と行った程で、睨みつけている小柄な眼鏡少女先輩。派手な書き文字が背景に浮かんでいるように錯覚したのでありますが、何のことはなく、背後の黒板に実際に描いてあるわけで、無駄にうまいですね。
「無駄にうまいですね」
「口に出して言うのかーい」
おそらくは年末のドラマにリスペクトされたのであろうかなと。ある意味あの作品は、文学的な文脈で語られても良いのではなかろうかと言うくらいに共通認識が広くされている、平たく言うならば有名なものであるわけであり、コミックスが全巻同好会室に揃っていることについても何ら不思議はない、というような論調で、顧問を丸め込んだことも懐かしい思い出です。
嘘です、あの騒動は思い出したくありません。
「正直言うならば、別に毎日書き続けなくても、トータルで100日になるならいいんじゃないかな?という気もする」
「企画の趣旨を全否定しているような気もしますが、まあ、先輩がいいんならいいんですが」
いそいそと、黒板背景に描かれた絵文字に合わせて高さを調節するために登っていた椅子から降りて、その座面の汚れを払って、とんと座って、だらしなく持たれた後で、面倒臭そうに言い放つ先輩、それに対して冷たく返す私です。
「……ねたが降りてこないんだよねー」
「基本無計画ですからね、先輩」
私は軽く返答をした上で、相手をしてあげているだけ優しいよね私、と思いつつ、冬場の定位置へと向かって、座ります。暖かいです。いい天気なのが救いですね。
「ノープラン、ノーライフ!」
「……妄言に聞こえますが、結構まともなスローガンのような?」
無計画では生きられない?この場合は、無計画でなければ、先に進めないとかいう意味合いになるのでありましょうか?それじゃやっぱりだめじゃん?
「それじゃやっぱりだめじゃん?」
「口に出すのかよ」
あー、とか、ウーとか、頭か首をひねりながら、苦悩する様子を見せつける先輩を視界の隅に捉えつつ、なぜならたまに飛び込んでくるからです、不意打ちは避けたいところですね、大きめのリュックの小さめな収納から文庫本を取り出して続きを読み始める私なのでした。