16日目
「男女比がおかしい物語はロマンあるよな」
「女性が多数なのはともかく、男性が多数だとどう種を維持しているのか気になりますね」
母体が多い理屈は人口を増やすためとかでわかるのですが、男性が多い方だと、先細りにしかならないのではないでしょうか?
ああなるほど、そもそも多すぎるので抑制しようとして偏るのでしょうかね?偶然の結果という可能性もありそうではありますが。
「基本女性が生き物のあり方だと聞いたことがあるな」
「遺伝子の多様性を確保するために発生したものが男性であるという意見は妥当性がございますね」
同じような特性しか持たない生き物は周囲の環境変化に弱いという特徴を持ってしまいますから、できるだけ混ぜられるようにしようとしてそうなった、とか。実際は逆でそうなった種族がたまたま生き残ったということであるようでございますけれども。
「同じことでは?」
「結果的にはそうですけれども、そういう仕組みが先にあるわけではない、ようですよ」
進化とか突然変異とかそのような特性があって、このようになったのではなくて、つまりは狙って適応したのではなくて、たまたま偶然そのような変化をした群れが生き延びたというだけの話でありまして、実は、種の保存というものが主体的にあるかと言われると、ないかもしれないという結論になるようですね。
「偶然の産物なんだなぁ」
「まあ、知性を持った段階で、コントロールできるようになりましたから、一概に種の保存的な構造がないというわけではありませんが」
ある意味客観的に、科学的に俯瞰できるようになってからこそ、進化論が具体的に機能し始めたとか言えそうではありますが、それではそのような思考の進化もまた偶然の産物ではなかろうかとかたまたま残っていったものが進化と呼ばれるのではなかろうかという展開になるわけでございまして。
「堂々巡りのような気がしてきたよ?」
「因果関係が複雑に入りみだれるわけでありましょうね」
結果からしか過程を評価できないということであるのでありましょうかね?どうすることが正しいのかは、やってみてしばらく経ってみなければ観察、分析できないということであるのではなかろうかなとか。ただ、精度の違いはあるけれども、情報の蓄積があればある程度の予想は可能なのではないかなと。
「そのうちに男女差がえぐいことになる社会も顕在化すると?」
「最初の方に言ったようだと人口が減ってくれば、女性は増えそうですね」
まあ、主従が逆転しているわけですが、実際には、女性が増えなければ、人口は減少し続ける流れに行きやすいということですので、そうならなければ種が断絶するとかになるのでしょう。もしくは社会構造が人不足で破綻するわけですね。この辺り、代替労働力をどうにかすれば良い可能性もありますが。
「もう少し色っぽい話になる予定だったのじゃよ」
「なぜに突然長老口調ですか?」
奇妙な顔をしている先輩に対応しながら、そろそろ定時です。




