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第98話 陽気な訪問

 落下する私は地上との距離を目測で把握する。

 間もなく地面に激突する頃合いだ。

 何もしなければ即死する。


 化け物扱いされる私だが、実際はただの人間であった。

 高所からの落下で耐えられるほど強靭な肉体は持っていない。

 そこは純然たる事実だ。


(まあ、このまま死ぬほど間抜けではありませんけどね)


 私は剣を振り上げて、魔量を込めて斬撃を連続で打ち放つ。

 そして防衛の要である多重構造の結界を切り裂く。


 斬撃はあえて威力を落としておいた。

 それによって半端に破損した結界が術式不良を起こして爆発する。

 連鎖する爆発はやがて上空への衝撃波となって噴射された。


 落下中の私はその直撃を受ける。

 魔力で肉体を保護して破壊力を分散し、さらに衝撃波に含まれる魔力を取り込むことで防御を固めた。

 そうすることで落下速度を落としながら結界を突破する。


 私は特に負傷がないことを確かめながら苦笑した。


(少々強引すぎましたかね)


 迅速な侵入を優先したため、力技になってしまった。

 もし魔力操作に少しでも綻びがあれば、衝撃波で肉片になるか、取り込んだ魔力を抑え切れずに融解している。


 とは言え、別に賭けに出たわけではない。

 私は剣術を極めるために鍛練を重ねてきた。

 その過程で魔力操作も習熟している。


 結果、一般的な魔術師では足元にも及ばないほど緻密な技能を習得していた。

 これくらいの結界ならば、十倍の多重構造になろうと同様に突破できるだろう。

 だから何の危険もない。


 結界内に侵入した私は城に注目する。

 あそこが魔導国の中枢で、聖剣シアレスが運び込まれた場所だ。

 魔力反応も微かに感じられるので間違いない。

 つまり今から私が侵入する敵の本拠地ということである。


「さて、派手に決めましょうか」


 私は結界から調達した魔力を剣に注いで、城に向けて一気に放出した。

 極光の斬撃が軌道上のすべてを消滅させながら進む。

 斬撃は魔導国の城を斜めに両断した。

 最上部の尖塔から、地鳴りを起こしながらずれていく。

 何らかの防御魔術が反応したのか、城全体で火花が立っていた。


 私は剣から伸ばした魔力の糸を城に粘着させて、振り払う勢いで落下速度と慣性を相殺する。

 そうしてゆっくりと宙返りを決めてから、二分された尖塔の片割れに着地した。

 そこから悠々と城内に飛び降りる。

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