第85話 勇者の決意
私はナイアと共に勇者パーティーの幽閉場所へと向かう。
既に解放された彼らは一カ所に集まっていた。
みすぼらしい囚人服で、武器や防具は何も持っていない状態である。
ただしその雰囲気は、以前に会った時よりも洗練されていた。
英雄と呼ぶに足る風格を宿している。
これが半年間の成果なのだろう。
私は朗らかに話しかける。
「どうも皆さん、お久しぶりです。助けに来ましたよ」
「あんた、なぜここに……」
「シアレスさんから依頼を受けたのですよ。素晴らしい報酬も受け取りました」
私は勇者の疑問に答える。
すぐさまナイアが偉そうに両手を広げて存在を主張した。
『ふふふ、それが吾じゃな! 勇者とその仲間達よ、存分にひれ伏すがよい……ッ!』
その言葉に従う者はいない。
場には微妙な空気が漂っていた。
苦い顔をする勇者が私に問いかける。
「なんだこいつは。シアレスに似た雰囲気だが」
「崩剣ナイアさんです。結構強いですよ。よければ譲りましょうか」
『こ、こらリゼン! すぐに吾を手離そうとするなぁっ!』
「冗談ですよ」
『いや、今のは本気の目じゃったな!』
ナイアの抗議を無視しつつ、彼女の運んできた魔術兵器を勇者パーティーに配る。
特に竜機鎧は有用だろう。
魔導国の軍隊を相手にしても余裕を持って立ち向かうことができる。
勇者パーティーの生存率は大きく向上したと言えるはずだ。
「これで装備面は問題ないでしょう。あとは依頼を達成するだけですね」
「シアレスは何を頼んだんだ?」
「砂漠の大陸を占拠する組織の殲滅ですね。それと母体である魔導国も破壊します」
ついでに私は現状について説明する。
終始、勇者達は深刻な顔つきをしていた。
聖剣シアレスが盗まれたことを重く考えているようだ。
誰もが黙り込む中、その流れを断つのはやはり勇者だった。
「……あんた、国と戦争する気か」
「戦争ではありません。ただの排除です。そういう依頼ですので」
「冷酷だな。まあとっくに分かっていたが」
「生真面目なだけですよ」
私は涼しい口調で流しながら、彼らの顔を順に見回す。
その上で質問をした。
「皆さんはどうしますか。こちらとしては自由になさってくださって構いません」
「もちろんシアレスの救出に向かう。俺達を助けてくれたんだ。見殺しにはできねぇよ」
「別に私だけでも解決できますよ。皆さんが危険な目に遭う必要はありません。それでも行動するのですか」
私が念押しすると、勇者は顔を寄せてきた。
彼は覚悟の決まった様子で断言する。
「――当然だ。俺達は勇者パーティーだからな」
「分かりました。では一緒に向かいましょうかね」
傲慢で未熟だった勇者は半年で良い方向に成長したようだ。
それを確かめた私は近くの装置に話しかける。
「聞こえましたか。我々が魔導国に向かうための準備をお願いします」
「……了解した。すぐに手配する」
看守長の声が短く応えるのを聞いて、私は満足げに頷いた。




