表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/122

第84話 封印の魔道具

 看守長の言葉を聞いた私に驚きはなかった。

 顎を撫でつつ、脳内で状況を整理する。


(まあ、予想はしていましたけどね)


 シアレスと思しき気配がまったく感じられないのだ。

 いや、遥か彼方を移動しているのが微かに捕捉できた。

 相当な速度で離れている。

 位置的に砂漠の大陸から逸脱しているだろう。

 どこか別の大陸に向かっているのだろうか。


 感知を続けつつ、私は看守長に尋ねる。


「誰が聖剣を持ち出したのですか」


「魔導国の賢者だ。古代の遺物として研究したいと言っていた。今頃は魔導国に移送している最中だろう」


「ふむ。それは由々しき事態ですね」


 聖剣は高度な魔術武器だ。

 使い方次第では殺戮兵器への転用も難しくないだろう。

 ましてや魔導国は高い技術力を誇る。

 懸念はすぐ現実になると思われた。


「しかし、シアレスさんは抵抗しなかったのですかね。化身としての身体を用いれば、戦うこともできそうですが」


「封印の魔道具で力を弱められていたのだろう。魔導国は強者の無力化に長けている。有利な環境を構築することで砂漠の大陸を制覇したのだ」


「なるほど。ですが私は一度も弱体化させられていませんよ」


「効果が及ぶ前に斬っているのだろう。封印の魔道具も完璧ではない」


 看守長の話を聞いて納得する。

 元騎士団長のウィリアムも強者だったが、監獄に収容されていた。

 彼やシアレスを封じ込める手段を魔導国が持っているのは確定のようだ。


 ただし、問答無用で相手を弱められるほど便利ではない。

 ある程度の制約や隙があるのだろう。

 看守長に訊いてみても、具体的な答えは返ってこなかった。

 封印の魔道具については秘匿事項らしく、ごく一部の者にしか伝えられないのだという。

 具体的な正体が分からないまま対抗することになりそうだ。


 もっとも、あまり悲観していなかった。

 これだけ暴れていたのだから、私に使おうとした場面もあったはずだ。

 しかし自覚症状はない。

 私の身体強化を貫通できるほどの効力がないか、発動前に阻止しているのだろう。

 あまり意識していなかったので気付かなかった。

 次に戦闘があったら、それらしき装置がないか注意しようと思う。


 思案する私のそばでは、ナイアが独り言をこぼしていた。

 彼女は歯噛みしながら延々と呟いている。


『シアレスの奴め、迷惑をかけおって……』


「心配ですか」


『誰が心配するものかっ! 少し苛立っただけじゃな! 何も気にしてなどらぬぞ! 本当じゃっ』


 ナイアが必死になって否定する。

 それが却って彼女の本心を表していた。

 私は微笑を深めて頷く。


(人格の宿る剣同士、気にかけたくなるのですかね)


 両者は仲が悪いそうだが、実際はそうでもないらしい。

 腐れ縁に近いのかもしれない。

 ある意味では、この場でシアレスを最も助けたがっているのがナイアだろう。


 私は彼女の背中に手を置いて告げる。


「ナイアさん。すぐに勇者パーティーを救出しますよ」


「それからどうするのじゃ?」


「この大陸は一旦放置して、魔導国に向かいます。彼らの陰謀を阻止しようではありませんか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ