表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/122

第83話 聖剣の行方

 ナイアが私のいる階まで飛び降りてきた。

 彼女はウィリアムの血痕を屈んで確認する。

 指先で拭って顔に近付けると、静かに呟いた。


『空間魔術を使いこなす凄腕の騎士すらも、リゼンとは比肩できぬのか』


「まあ難しいでしょうね。私が瀕死なら良い勝負になったかもしれませんが」


『瀕死でようやく互角なのじゃな……』


 ナイアは呆れたようにぼやいた。

 驚きが少ないのは、私の実力の片鱗を身を以て理解しているからだろう。

 あの時に底知れない領域を垣間見たはずだ。

 だから冗談と思わず、荒唐無稽な推測でないことを察している。


 私としてはただ事実を述べただけだった。

 本当の全力を出した場合、ウィリアムの実力では話にならないだろう。

 彼の卓越した剣術は私の足下には及ばず、空間魔術など強引に切り裂けばいい。

 別に何も難しいことではなかった。


(瀕死ですら力不足かもしれませんね)


 戦いを想像して、ふとそんなことを思う。

 まあ、所詮は妄想である。

 余計なことを考えるのは、また後でいいだろう。


 大切なのは現実なのだ。

 依頼はまだ終わっていない。

 早急に次の段階へと進めねばならなかった。


 手を打った私は話題を転換する。


「さて、これで監獄内の囚人も大人しくなるでしょう。勇者パーティーの皆さんを助けに行きましょうか」


『ううむ。死んでいないとよいがな』


「大丈夫ですよ。彼らの反応は消えていませんから」


 その時、近くの装置から看守長の声がした。

 随分とざらついているが、内容は分かる程度のものだった。

 戦いの終了を見計らって話しかけてきたのだろう。


「……聞こえるか。囚人がほぼ殲滅されたことで設備の復旧を始められた。勇者パーティーに辿り着く最短の道を案内する」


「ありがとうございます。その前にもう一つ探してほしい物があるのですが」


「何だ」


「聖剣です。勇者の持ち物にあったでしょう」


 シアレスが話しかけてこないのが気になる。

 ここまで近付いたのだから、思念が飛んでくるものかと思っていたが、なぜか音沙汰がない。

 魔力が封じられて話しかけられないのか。

 それともまた別の理由があるのか。

 少し嫌な予感がしていた。


 私の質問に対し、看守長は暫し沈黙する。

 やがて彼女は言いづらそうに回答を述べた。


「すまない。聖剣は少し前に回収された。ここにはもうない」

もし『面白かった』『続きが気になる』と思っていただけましたら、下記の評価ボタンを押して応援してもらえますと嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 同時進行されている光の勇者と闇の処刑人とこの作品、一太刀につき金貨1枚が反対で投稿されているような気がするのですが....
[一言] 最新話が「光の勇者と闇の処刑人」と入れ替わっています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ