表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/122

第75話 ナイアの憂鬱

 ハエルメンを殺した私達は再び移動をする。

 とは言え、特筆するような事態は滅多に起きない。

 基本的には囚人を斬りながら進むだけだ。

 人体実験を受ける彼らはそれなりの強さを持つが、私を苦戦させるほどではない。

 先ほどのハエルメンに魔力を奪われて瀕死の者も多く、戦いが成立しないような場面もあった。

 ようするに退屈な時間だったのだ。


 途中、看守長が私達を止める。

 そしておもむろに壁の鉄板を外した。

 彼女は壁の中を指し示しながら説明する。


「この通気口で勇者パーティーのいる区画まで最短で向かえる。しかし、かなり危険な道のりだろう。脱獄囚が待ち伏せしているかもしれないが……」


「構いません。最速で移動すべきですからね。敵はすべて私が葬ります」


 私は剣を回しながら即答する。

 これだけの戦闘をこなしても刃こぼれ一つない。

 まだまだ戦える状態であった。


 一方、各種魔術兵器を引きずるナイアが控えめにぼやく。


『リゼンは本当に心強いのじゃ……それで吾を使ってくれれば完璧なのじゃがな』


「使いませんよ。役目が欲しければ勇者殿に頼んでください」


 私がぴしゃりと言った途端、ナイアが震えながら驚愕する。

 そして片手を振り上げながら力強く主張し始めた。


『まさか、吾を譲渡する気かっ!? 絶対にいかんぞ! 半端者の勇者の武器になるのは嫌じゃ!』


 どうやら予想外のことだったらしい。

 私が使わないと断言しているのだから、必要そうな誰かに譲渡する可能性は考えていなかったのか。

 何にしても不満らしい。


「シアレスさんの教えで順調に成長しているそうですよ。それほど弱くないと思います」


『あの聖剣の弟子となれば尚更に嫌じゃぁっ』


「無駄話なら後で聞きますから、先に行ってもらえますか」


 面倒になった私はナイアを掴んで通気口に投げ入れる。

 悲鳴に近い思念が反響しながら遠くなっていくのは、本人の心情が現れているからか。


 目の前のやり取りを見ていた看守長が気まずそうに尋ねてくる。


「……いいのか? あれは崩剣の化身だろう。それにしては扱いがかなり雑だが」


「構いませんよ。別に敬うような相手ではありませんからね。ちなみにナイアさんを先行させたのは、進路上の囚人を抹殺してもらうためです。これで多少は憂さ晴らしになるでしょう」


「そこまで考えていたのだな」


「いいえ、方便です」


 私は優雅に笑うと、通気口の中に跳んで入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] >面倒になった私はナイアを掴んで通気口に投げ入れる。 レディの扱いはもう少し丁寧にしろよ……(呆れ)。 こんなに雑に扱われては、なるほど、今…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ