第63話 検証終了
その後、私は二人の兵士を殺害した。
別に特筆することはない。
万が一にも負けないように油断せず、ただ彼らの攻撃が当たる前に剣を振るっただけである。
向こうの防御力では私の斬撃に耐えられないことは分かっていた。
だから苦戦の欠片もなく決着させられた。
強いて言うなら、魔力を大量に奪われて疲労感が濃いくらいだ。
それも時間経過ですぐに気にならなくなるだろう。
私は剣を鞘に戻して息を吐く。
「悪くない運動になりましたね。魔術兵器の有用性もよく分かりました」
わざと時間をかけただけあって、竜機鎧に関して様々なことが判明した。
構造的な欠陥も把握し、おおよその出力も感じ取れた。
いつか再戦することになったとしても、最低限の労力で破壊できるだろう。
強力無比な兵器には違いないが、結局は玩具に過ぎない。
中身が知れると途端に価値が薄れてしまう。
私の関心を維持するだけの代物ではなかった。
何より魅力がない。
誰が使っても癖が出にくいのが良くないのだ。
強さだけを求めた弊害だろう。
もっと個性を発揮して、楽しませてくれる工夫を凝らしてほしいものである。
(まあ、高望みな気もしますけどね)
己の思考に苦笑しつつ、破壊した竜機鎧の一部に縄を括り付けていく。
回収不可能な物も少なくないが、ほとんど無傷で装着者を殺した鎧も残っていた。
これらを勇者パーティーに譲渡するつもりだ。
簡単な修理を済ませればまた使えるようになるだろう。
私の依頼に彼らの生存は関係ないが、今回は完璧な成功を成し遂げるつもりだった。
そのためには勇者パーティーには生還してもらわねばならない。
竜機鎧はきっと役立ってくれるはずだ。
これを装着させることで、勇者パーティーの生存率を底上げする。
一騎当千の機能を搭載しており、並の軍隊ならまず敵わないほどの設計となっていた。
私の攻撃の前では無力に等しかったが、それは例外のようなものだろう。
便利な魔術兵器には違いなかった。
初めての装着になるものの、きっと使いこなしてくれると信じている。
(彼らにも色々と協力してもらいましょう)
私は竜機鎧の残骸を引きずりながら移動する。
これくらいの労働は身体強化があれば楽々と可能だった。
幽閉された勇者パーティーを早く救出して、派手に暴れようと思う。




