第62話 冷徹な刃
短期決戦が望ましい。
そう思ってはいたものの、興味関心が先立ってしまった。
私は絶妙に加減をしながら戦闘をこなしている。
接近のたびに魔力を奪われるが、だんだんと感覚が掴めてきた。
身体強化の応用で上手く阻止している。
かなり豪快に吸われるため面倒だが、別にやれないことはなかった。
私は三人の竜機鎧の兵士と戦いながら感心する。
(凄まじい身体能力です。出力が人体の限界を超えていますね)
竜機鎧は、現代魔術では説明の付かない性能だ。
これを装着するだけで超人になれる。
たった一人でも軍隊を相手にできるのではないか。
少なくともこの砂漠の大陸に生息する変異魔物なら蹂躙できるだろう。
それほどまでに高性能だった。
ただし、無敵の装備というわけではない。
まず消費魔力が膨大すぎる。
周囲から吸収しながら稼働させているため、魔力が枯渇した時点で機能停止に陥る。
すなわち無防備になってしまう。
そのため長時間の戦闘には不向きだった。
次に装着者の疲弊が激しい。
目の前の三人は明らかに反応速度が低下していた。
竜機鎧はまだ十全に機能されているが、使い手が限界寸前なのだ。
本来の身体能力を超えた動きをし続けるのは自殺行為だろう。
それを装着者は強要されているのだから、激しく疲労するのは当然のことだった。
竜機鎧の性質を把握しつつある私は、途中で新たな疑問を閃く。
その謎を解き明かすため、防戦から一転して動き出した。
「さて、制御を乱すとどうなるのでしょう?」
私は隙を突いて剣を横薙ぎに振るう。
ちょうど一人の竜機鎧の表面を掠めるようにした。
装着者まで刃が届いていない。
本来なら気にも留めないほど小さな損傷だ。
ところが竜機鎧は痙攣を始めて、いきなり爆発した。
そのまま装着者ごと四散する。
残る二人はぎょっとした様子で凍り付いた。
疑問を解消できた私は晴れやかな表情で述べる。
「術式の脆そうな部位を狙いましたが当たりですね。やり方次第では小さな力でも壊せるようです」
『リゼンは冷酷じゃな……』
「必要な検証をしているだけですよ。今のうちに構造を知って、勇者パーティーの皆さんに情報提供できればと思いまして」
大陸のどこかに竜機鎧がまだ残っているのかもしれない。
今のうちに弱点を暴いておくのは悪いことではないはずだ。
私は依頼遂行に力を尽くすと決めたのだ。
僅かな失敗も犯す気はなかった。
もし『面白かった』『続きが気になる』と思っていただけましたら、下記の評価ボタンを押して応援してもらえますと嬉しいです。




