第61話 竜機鎧の力
竜機鎧を纏う五人の兵士の間には、驚愕と困惑が混在していた。
表情が分からずとも伝わってくる。
彼らには、一騎当千の自負があった。
それをいとも簡単に破られたのだ。
精神的な衝撃は大きいだろう。
心を打ち崩す意図もあったので大成功だった。
予想外の光景を前に、五人は硬直した。
一瞬の思考停止も、戦闘中においてはあまりにも致命的である。
当然ながらその隙を見逃すはずもない。
私は追撃の刃を叩き込み、大剣使いの首を片手を切断した。
ちょうど装甲が薄い箇所を狙ったのだ。
ごろりと生首が転がり落ちて、鮮血が噴き上がる。
死体の竜機鎧から魔力が噴出して、濃紺色の炎となって空を焦がした。
内部の機構が破損して不具合を起こしたようだ。
装着者がいないと安定しないらしい。
私は素早く飛び退きながら苦笑した。
「おや、張り切りすぎましたかね」
『な、なんじゃと……』
ナイアも驚いている。
まさか真正面から竜機鎧を攻略するとは思わなかったらしい。
己を模倣した魔術兵器に一定の評価を下していたのだろう。
四人に減った竜機鎧の兵士達は攻撃を中断する。
彼らは固まって陣形を組み直した。
いきなり仲間の一人がやられて警戒しているようだ。
その気持ちも分かるが、無駄な努力である。
私は正攻法で抹殺した。
彼らが土壇場で奇策を閃くとは思えない。
竜機鎧の性質を考えると、やはり正面切っての戦いになるだろう。
剣を構える私は己の魔力量を確認する。
今のやり取りで大幅に消耗していた。
竜機鎧に接近したことで吸い取られたのだ。
斬撃自体の威力も下がっていた。
此度の相手は間合いが重要になる。
短期決戦が望ましく、何度も打ち合うべきではない。
私は身体強化を調整して、外部から魔力を奪われにくい性質に変えておく。
竜騎鎧の力を完全に封じられるわけではないが、それなりの効果は期待できるはずだ。
(このくらいなら耐えますかね)
私は瞬時に突進して、四人に向けて振り下ろしを炸裂させる。
大地を叩き割る一撃が、槍使いを真っ二つにした。
咄嗟に防御しようとしていたが、見込みが甘すぎる。
私の剣技は、生半可な力では受け止められない。
辛うじて回避した三人はすぐさま反撃に移る。
私は魔術と矢をそれぞれ弾くと、盾使いの殴打を受け流して蹴り飛ばした。
また魔力を吸われた感覚があったが、先ほどより軽減されていた。
その調子で三人の攻撃を捌きつつ、竜機鎧の性能を確かめていく。




