第59話 魔導国の抵抗
上陸した日の深夜。
夜の砂漠にて、私は魔導国の猛攻を捌きながら前進していた。
彼らは各種兵器を用いて必死に防衛する。
既に余裕はなく、恐慌状態に陥りながらも戦闘に参加していた。
抑え切れない恐怖が場を支配している。
私はその只中を突き進む。
「威勢が良いですね。もっと盛り上げていきましょう」
微笑を湛えながら剣を振るう。
一太刀ごとに衝撃波が炸裂し、軌道上の兵士が爆散するか真っ二つになった。
それが数十人単位でまとめて発生する。
砕け散った防御結界が次々と継ぎ足されているが、明らかに間に合っていない。
そもそも結界ごと破壊すればいいだけなので、何の意味も為していなかった。
仮に今の数百倍の速度で修繕されても、私が数千倍の速度で攻撃するだけである。
一方的すぎる惨状に思うところがあったらしく、ナイアが小声の思念で嘆く。
『なんというか、とんでもない光景じゃな。魔導国の奴らも決して弱いわけでは……いや、むしろ強大な戦力じゃぞ。発掘した魔術兵器に改良を加えて、万全の性能を発揮しておる』
「関係ありませんよ。叩き斬ればいいだけですからね」
そう返しながら大上段からの一閃を前方に見舞う。
運び込まれていた大型兵器が次々と爆発し、準備をしていた兵士を巻き込んで木端微塵に吹き飛んだ。
被害は加速度的に増加していく。
何も恐れることはない。
私はただ迎撃しながら突き進むだけなのだ。
体力的にはまだ十二分に余裕がある。
たとえこのような戦闘が何日続くこうと、剣技が曇ることは決してなかった。
傭兵という職業柄、継続戦闘には慣れているのだ。
勇者パーティーの幽閉される施設まで疲労することなく辿り着けるだろう。
魔導国の者達にとっては悪夢のような状況に違いない。
軽快に進むこと暫し。
夜明けの気配が見え始めた頃、前方から高出力の魔力反応が接近してきた。
それも複数だ。
砂を蹴りながら姿を現したのは、漆黒の鎧を纏う集団だった。
鎧の表面には魔術的な彫金が施されており、生物的な脈動を示しながら光を灯している。
集団に気付いたナイアが驚愕の声を洩らした。
『あれはまさか……っ!』
「知っているのですか」
『竜機鎧という装着型の兵器じゃ。周囲の魔力を取り込んで己の力に変換する。吾の特性を真似て量産化された代物じゃな』
ナイアは緊張感を滲ませながら答えた。




