第54話 迎撃戦
私はそのまま直進する。
艦隊が散発的に光線を放つも、やはり私を止めるだけの力はなかった。
絶大な威力ではあるが対処は容易だ。
たとえ絶不調だろうと問題なく切り抜けられるはずである。
軽快に捌いていると、光線は飛んでこなくなった。
艦隊に蓄積された魔力が枯渇しかけているのだろう。
すぐに仕留められると考えて、光線を無計画に使ってしまったのが原因だ。
私は徐々に距離を縮めながら微笑する。
(最大出力での連射は想定していないようですね)
かつての魔術兵器は、確かに凄まじい性能だ。
しかし、使い方を誤ると十全な働きができない。
迎撃に使われた艦隊は、本来は大規模戦力を破壊するために使用される類だろう。
対個人を想定した兵器ではなさそうだった。
もしかするとそういった用途の機能や、別の兵器も存在するのかもしれないが、艦隊を操る者達が判断を間違えたのは確実である。
海上を駆けるうちに砂漠の大陸とかなり近付いてきた。
居並ぶ艦隊の様子も細かいところまで分かってくる。
軍人らしき者達が叫んで指示を飛ばしているのが見えた。
彼らは大いに慌てているらしい。
私は喜色を隠さずに呟く。
「さて、次はこちらから反撃しましょう」
『今度こそ吾を使え! あんな兵器など一発で吹き飛ばせるぞ!』
「生憎ですが、ナイアさんに頼らずとも可能なのですよ」
私は優雅に返すと、自前の剣に魔力を込めた。
今回は実質的に斬り放題だ。
攻撃回数の制限もなく、余計な工夫をする必要もない。
――だから、ただひたすらに、剣を高速で振るい続ける。
前方へと放たれた斬撃の嵐は、海を削ぎながら拡散していった。
やがて荒れ狂う波を伴って艦隊全体へと炸裂する。
側面から一刀両断された艦隊は、底部が分離して次々と転覆した。
或いは船体が斜めに割れて、断面図を晒しながら沈む。
何らかの重要機関が破壊されたのか、大爆発を起こす船もあった。
その爆発が味方の船を粉砕して、さらに被害が膨らんでいく。
『なっ……』
ナイアが言葉を失っていた。
その間に私は、崩壊する艦隊の間を駆け抜ける。
ここから彼らが復帰するのは不可能だろう。
「よし、ひとまず殲滅できましたね。今の内に上陸しましょう」
『……もう何も言わぬ。好きにするがよい』
ナイアは考えることを放棄していた。
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