第53話 過激な挨拶
砂漠の大陸を目視して少し経った頃、前方が騒がしくなり始めていた。
ほぼ同時にナイアが警告してくる。
『おい、リゼン。吾らを待ち伏せする者がおるぞ』
「ほほう。それは楽しみですね」
私は期待に胸を膨らませて応じる。
きっと件の組織が迎撃に現れたのだろう。
海上を急接近する私を察知して、距離があるうちに潰そうという算段に違いない。
上等だった。
派手な挨拶は嫌いではない。
むしろ好ましくさえ思っていた。
どうせ組織は殲滅するつもいなのだ。
向こうから姿を見せてくれるのならば好都合であった。
やがて進路を塞ぐようにして現れたのは、数十隻にも及ぶ鋼鉄の船だった。
いずれも高出力の魔力を保持し、高速機動で迎撃の陣形を構築する。
なかなかの警備体制だ。
魔術最盛期の兵器を上手く使いこなしているらしい。
やがてナイアが解説を挟む。
『あれは艦隊じゃな。魔術兵器の一種で、強烈な砲撃能力を持つ。上位の魔族だろうと直撃すれば消し炭じゃ』
「凄まじい威力ですね。私などひとたまりもないでしょう」
『……その割には笑っておるが?』
「砲撃が当たればの話ですから」
その直後、鋼鉄の船――艦隊の魔力が数十倍に膨れ上がった。
ほどなくして真っ赤な光線の束を私に向けて放出される。
光線は海を蒸発させながら迫ってきた。
生身の人間に撃つには、些か過剰すぎる威力だろう。
案の定、ナイアが慌てた様子で主張する。
『吾を使え! 崩剣の力で対処できるッ』
「心配無用です。自前の武器がありますので」
私は悠然と微笑み、剣を高速で抜き放った。
そして、光線を連続で切り捌いていく。
真っ二つに割れた光線はあちこちに拡散して爆発するが、私に害を為すことはない。
最低限の労力で突破口を開く。
私からすれば呼吸よりも簡単なことであった。
相手は火力特化の兵器だ。
駆け引きも何もない。
つまり敵とすら呼べない代物である。
私は微塵も減速することなく砲撃を突破すると、心配するナイアに応じる。
「ほら、問題ありませんでした」
『滅茶苦茶じゃな……普通なら即死する火力じゃぞ?』
「直線的な攻撃なので対処は難しくありません。防御に専念すれば尚更ですね」
『……暴論すぎて言い返す気もなくなりそうじゃ』
ナイアは疲れた様子で呻いた。
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