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第46話 勇者の遺産

 その日、私はさっそく出発した。

 ちょうど何の依頼も受けていない時期だったので、シアレスと結んだ契約を始めることにした。


 事態は切迫している。

 本当はすぐにでも砂漠の大陸へ向かって、勇者パーティーの窮地を救うべきだろう。


 しかし、まずはシアレスから提示された報酬の確保が優先である。

 仕事は必ず前払いだと決めていた。

 どんな相手でもそれが鉄則だ。

 たとえ神を前にしても、私は考えを曲げる気はない。


 幸いにもシアレスから聞いた遺産の在り処は、砂漠の大陸へと向かう途中にあった。

 きっとそれを見越して私に提示したのだろう。

 感情論で私を動かすのは不可能と判断し、合理的に進めることにしたのだ。


(それにしても、勇者の遺産とはどのような代物なのでしょうね)


 未開の土地を進みながら私は考える。

 シアレスも具体的には知らないらしい。

 とりあえず当時の勇者の武具や資金があるのは確実だった。

 誰にも見つからない場所に封印して、それをシアレスに託したのである。


 曰く、未来の勇者を救うために活かしてほしい。

 勇者はそう言った。

 シアレスは約束を律儀に守り、今日まで遺産を誰にも明かさずにいた。


 随分と大層な物だが、果たして私が譲り受けていいのか疑問だ。

 とは言え、他でもないシアレスが判断したのである。

 こちらが考える部分ではないだろう。

 遺産を継承したシアレスが使い時だと思ったのなら、私はありがたく受け取ればいい。


 その返礼は結果で見せつけるのだ。

 剣聖リゼンが求められているのはその一点に尽きる。

 私が参戦すれば、どのような巨悪だろうと葬り去ることができる。

 それを確信したからこそ、シアレスは私と契約を結んだ。


 移動を開始してから丸十日が経過した。

 この頃はシアレスから思念が飛んでくることもない。

 きっと勇者が消耗して、私との会話に力を割く余裕もないのだろう。


(到着まで全滅していないといいのですけどね)


 勇者パーティーの安否を考えつつ、私は枯れた森の最奥部に到着する。

 何重もの幻惑魔術が張り巡らされたそこには、石造りの祠があった。


 シアレスによると、ここに遺産が眠っているそうだ。

 封印解除の呪文も聞いているため、手順で迷うこともない。


 私は祠の前で呪文を口にした。

 すると祠が仄かに発光する。

 目の前の大地が開いて、地下への階段が現れた。


 どうやらこの先に遺産が待っているようだ。

 私は期待を胸に階段を下りていく。

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