第40話 誰の功績か
半日後。
街を襲撃した魔族は全滅した。
勇者パーティーや傭兵、騎士団がそれぞれ連携して討伐したのである。
魔族本隊が壊滅したのが大きかった。
そこから士気が急上昇し、ほとんど私が手伝うことなく戦いは終了した。
街の防衛力も馬鹿にできないものだ。
僅かな生き残りの魔族は我先にと逃げ出した。
さすがにこの形勢から玉砕覚悟で仕掛けるだけの度胸はなかったらしい。
取るに足らない戦力だが、どこかで報復を目論むかもしれない。
ただし、その時に狙われるのはきっと勇者達だ。
私の知ったことではない。
ひとまず街の危機は避り、平穏が戻ってきた。
今はそれでいいだろう。
街の復興が始まる一方で、魔族戦で大いに活躍した勇者パーティーが表彰された。
いずれ広場にそれぞれの名を記した銅像が建てられるらしい。
ちなみに私の活躍も彼らのものということになった。
別に功績を奪われたのではない。
そうなるように仕組んだのだ。
近頃の勇者パーティーは、あまり調子が良くないという評判が立っていた。
戦力低下が原因であるのは否めない。
このままだと、魔王討伐の成果すらも虚偽ではないかという事態にまで発展していた。
私としては勇者達にすべてを押し付けたかった。
下らない政治事に巻き込まれるような状況は望ましくない。
彼らには此度の功績を以て信頼を回復してもらい、そのまま国の道具になってほしかったのだ。
だから功績を丸投げしたのである。
傭兵として宣伝行為はすべきだが、私の場合はもう十分に名が知れている。
無理に武功を重ねる必要性も薄い。
だから今回も影の立場に徹したところで痛手はないのだった。
(聖剣も譲渡できましたし、ようやく自由の身ですね)
私は宿屋の一室で旅支度を整えながら考える。
荷物は最低限だ。
手持ちの資金を街の領主や教会、騎士団等に匿名で寄付したことでかなり軽くなった。
少しばかりの餞別だ。
私は守銭奴を自覚しているが、別に大した使い道があるわけではない。
日々の生活に困らなければそれで十分なのだ。
加えていざという時のために貯金しているため、多少切り崩したところで困窮するはずもない。
消費した分は、どこかの富豪から搾取するだけである。
これで街の復興作業も円滑に進むだろう。
今度こそ私の役目は終わった。
シアレスが私を捜索しているかもしれないので、さっさと出て行こうと思う。
新たな契約が、私を待っている。