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第38話 剣聖の奥義

 斬撃と共に、刃に巻き付けていた魔力の糸が拡散した。

 それらは遠心力に乗ってほぼ無制限に伸びると、凄まじい切れ味を以て軌道上の物体を切断していく。


 私はそれら一本一本の挙動を完全に把握していた。

 大元の剣の速度や角度を調節して、ただの一太刀で狙った通りに動かす。


 結果、魔力の糸はぶつかり合いながら高速で躍動し、標的として定めていた魔族本隊を細切れに刻んでみせた。

 空中にいた個体や、勇者パーティーと戦っていた個体も巻き添えにする。

 彼らは魔力の糸が肉体を通過したことすら気付いていないだろう。


 私が大地すれすれで剣を止めた時、周囲の時は止まっていた。

 戦場に真なる静寂が訪れる。

 ほんの僅かな間を置いて、捕捉した魔族達は残らず肉塊となった。

 鮮血が弾けて、悪臭と共に周囲を染め上げていく。


「さて、これで契約完了ですかね」


 私は魔力の糸を消して、剣を鞘に収める。


 今の技は、私が習得した技の中でも屈指の難度だ。

 糸の数が多いほど攻撃能力が高まるが、それぞれを完璧に制御できなければ危険すぎて使えない。

 最悪、己の身体を切断してしまう恐れもあった。


 しかし習得できると唯一無二の活躍ができる技と言えよう。

 糸の挙動次第で斬撃が柔軟に変動する。

 精密性を高めた時の汎用性はずば抜けていた。

 剣の形状や間合いを無視して、物理的に不可能な位置にいる複数の対象を同時に攻撃できる。

 最終的には、相手の体内だけを木端微塵になるまで切り刻むことだって可能だった。


 この技に関しては、私もまだ発展途上である。

 まだまだ鍛えられる余地があると考えていた。

 我ながら最強に近い男だという自覚はあるが、成長限界に達した気は一切していなかった。


 こうして戦っているだけでも剣術の上達は実感している。

 刃を振るえば振るうほどに強くなっていく確信があった。


 剣聖リゼンに終わりはない。

 努力が常に最大値で実り続けることが、私の最大の才能だった。

 おかげで人類を超越し、魔王すらも一蹴できる力を手にした。

 だから傍若無人な傭兵契約を迫ることもできる。


 だがしかし、それではまだ飽き足らない。

 存在するかも分からない己の限界を知りたい。

 まだ遥か彼方にあるのは確かなのだ。

 大いなる使命――否、狂気に等しき衝動を抱える私は、契約という形式を命綱に境界線を越えるのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! 剣聖の奥義、全方位攻撃という点では『千本桜景厳』に似てなくも無いですが、 描写・技の効果ともに千本桜景厳と違った印象(※)が有り、かっこいいと思います。 (…
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