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第24話 魔族襲来

(魔王軍の残党でしょうか。何が狙いなのですかね)


 数は五十体ほどだが、魔術で配下を次々と転送してきている。

 彼らはどんどん勢力を膨らませながら街を襲撃していた。


 あちこちで悲鳴が上がって建物の火が燃え広がっていく。

 鳴り響く鐘は緊急事態を知らせるものか。

 現地の騎士団も出動した頃だろう。


 宿の部屋からそれを眺めていた私は、ベッドに腰かけながら肩をすくめる。


(少し様子見をしましょう。別に雇われの身でもありませんし)


 何も慌てることはなかった。

 そもそも向こうの狙いが分からないうちに動くべきではない。

 まずは五感を魔力で強化し、室内から情報収集を進めていくことにした。

 探るうちに魔族の声を捉える。


「勇者はどこだァッ!」


「殺してやるぞォ! 早く姿を現しやがれ!」


「心臓を喰ってやる! さあ、ほらさっさと出て来いッ!」


 魔族達の怒声には殺気と愉悦が入り交じっていた。

 彼らは街の襲撃を楽しんでいるらしい。

 そして口が軽いおかげで重要な情報も判明した。


(標的は勇者ですか。ならば私は関係ないですね)


 きっと街に来た魔族達は亡き魔王に反発していた者達だ。

 死を知って成り上がりを企んでいるのではないか。

 勇者の抹殺は、ちょうどいい名声になる。

 ここで戦果を挙げれば、次代の魔王になることも不可能ではないはずだ。


 なんとなく状況を察した私はゆっくりと着替えた後、部屋の扉を開けた。

 慌てふためく宿泊客と主人を横目に外に出る。


(さて、今のうちに街を出ますか。或いは領主と面会して、契約を迫ってもいいですが……)


 いくつかの方針の候補を吟味していると、そばで悲痛な声が上がった。

 それは幼い少女の声だった。


「お母さん! ねぇ起きて、お母さんっ」


 少女が瓦礫の山に向かって叫んでいる。

 見に行くと母親らしき女性が下敷きになっていた。


「おや、大変ですね」


 そう言って私は瓦礫を切り刻むと、僅かな隙で母親を引きずり出した。

 華奢な身体を持ち上げて横たわらせる。

 少女は涙を流す目で私を見上げていた。

 私は薄く微笑して話しかける。


「大丈夫ですか」


「……おじさん、誰?」


「通りすがりの剣士です。助けが必要かと思いましてね。これはサービスです」


 切り崩した瓦礫を指し示すと、少女が抱き付いてきた。


「おじさん、ありがとうっ!」


「お気になさらず。無償の善行もたまには……いえ、特に何も感じませんね。やはり仕事でないと気乗りしないようで」


「……?」


 少女は不思議そうに首を傾げる。

 私はただ苦笑した。

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― 新着の感想 ―
[一言] あの剣聖が幼女を無償のサービスで助けたなんて、、、、なんのフラグだろうか?
[良い点] おもろいです!
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