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第23話 剣聖の思案

 その日の夜、私は街の宿屋に宿泊していた。

 聖剣シアレスを譲渡したので再び一人になった。

 誰かと行動することに苦痛は感じないものの、今の方が気楽である。


 聖剣を受け取った勇者パーティーはまだ街にいた。

 さっそく新たな武器を見せびらかしているそうだ。

 それに加えて献金も募っているらしい。


 彼らの経済状況はあまり良くない。

 これを機に収入を安定させて、勇者の名声を利用しつつ、円滑な冒険にしたいのだろう。

 出立当初は国からの支援金もあったが、あのパーティーは散財癖を持つ者が多かった。

 世界を救う英雄として歓迎される立場の虜になってしまったのである。


 現在ではその評判にも暗雲が立ち込めていた。

 それを聖剣によって晴らすのが目的なのだろう。


(魔王討伐も自分達の武功にするつもりですかね?)


 今のところはそこまでしていないようだった。

 まずは真偽の確認からするはずだ。

 個人的な予想では、いずれ公表するのではないかと思う。


 魔王殺しの勇者ともなれば、まさしく救世の英雄として崇め奉られることになる。

 生涯の栄光を約束されるようなものだ。

 そのような富を簡単に手に入れることができる。

 彼らが見逃すはずがない。


 魔王討伐の功績を奪われることについてはあまり興味がなかった。

 傭兵稼業の宣伝にはなったかもしれないが、あまりに偉業すぎるので各国の政争に巻き込まれる恐れがある。

 別に暴力で解決してもいいのだが、すると今度は犯罪者になってしまう。


 なんとも面倒臭い立場と言えよう。

 このことに気付いたのが魔王を殺した後だった。

 聖剣譲渡が一番だが、武功を押し付けたかったのも目的の一つであった。


 勇者パーティーには犠牲となってもらおう。

 彼らも甘い蜜を啜ることになるので、お互いに悪くない条件である。

 虚偽報告に伴って余計な問題が発生するかもしれないが、それは彼ら自身の責任だ。

 私の知ったことではない。

 シアレスが同行しているので、本当に危なくなった時はなんとかするだろう。


(それよりも自分のことです。新たな雇用主を探さなくてはなりません)


 思考を切り替えようとしたその時、窓の外から轟音が聞こえてきた。

 見れば遠くの建物が燃えている。

 魔力が込められているので、何者かが術を炸裂させたらしい。


 夜空の彼方を無数の影が飛んでいる。

 ゆっくりと街に近付くその姿は、紛れもなく魔族の集団だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 勇者は典型的な“勇者(笑)”みたいですな。
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