第22話 再会
魔力反応を探りながら街を散策していると、それらしき一団を発見した。
案の定、そこには勇者パーティーがいた。
彼らは通りに面した店で仲良く食事をしている。
見慣れない者が加わっているが、おそらくは私を追放した後に引き抜いたのだろう。
私は彼らの前に現れて挨拶する。
「やあ、どうも皆さんこんにちは。お久しぶりですねぇ」
「剣聖リゼン……ッ!」
勇者が驚愕しながら立ち上がった。
彼の片手はなぜか剣の柄に触れている。
この場で攻撃を仕掛けてくるつもりなのだろうか。
喧嘩別れに近い形だったが、さすがに殺し合うほどではないと思っている。
だから私は殺気を放たず、柔和な対応を意識した。
「そんなに構えないでくださいよ。周りが怖がっていますよ」
「チッ」
通行人を示すと、勇者は露骨に舌打ちした。
そして椅子に腰を下ろす。
ただし、片手はいつでも剣を引き抜ける位置にあった。
やはり信用されていないようだ。
他の者達も私を警戒している。
既に目配せを終えて戦闘準備を整えていた。
一触即発の空気は、他ならぬ彼らが構築している。
私はよほど恨みを買ってしまったのだろう。
同時に心身の疲労がよく見える。
(色々と苦労されているみたいですね)
私がいなくなったことで、戦力面に陰りが差したに違いない。
相対的に全員の負担が増えてしまったのだろう。
別に同情はしない。
ただ憐れだと思ってしまった。
不機嫌そうな勇者は本題を切り出してくる。
「何の用だ」
「勇者殿に贈り物があって参上しました」
私は腰の聖剣を外して持ち上げた。
それをゆっくりと勇者に差し出す。
「聖剣です。どうぞ貰ってください」
これには彼らも仰天する。
椅子とテーブルを倒しながら、それぞれ反応した。
「なっ……!?」
「聖剣だとッ」
「そんな馬鹿な……失われた遺産のはずだ。なぜリゼンが持っているのだ!?」
「聖剣はエルフの森に封印されていました。成り行きで引き取ったのですが、勇者が持つべきかと思いまして」
私は冷静に説明をする。
こちらの口調からして冗談ではないと分かったのだろう。
勇者はひったくるようにして聖剣を掴み取った。
「……礼は言わねぇからな」
「ご自由に。感謝の言葉は求めていませんから」
私は踵を返して歩き出す。
これで用事は済んだ。
無駄話も不要なので、さっさと立ち去ろうと思う。
『おい。本当に我の所有権を放棄するのかッ! いいのか、これだけ高質な武器は二度と手に入らぬぞ! それでもいいのかぁっ!?』
シアレスの焦る声が聞こえてきた。
そこで私は伝え損ねていたことを思い出して振り返る。
怪訝そうな彼らに笑顔で告げた。
「そうそう、魔王は私が殺しました。手柄はあげますので、好きに虚偽報告してもらって構いませんよ」
再び仰天の声が上がるのを愉快な気持ちで見つつ、私は今度こそ立ち去った。