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第19話 魔王殺しの剣聖

 魔王の死体が瘴気となって蒸発し始めた。

 内包していた力によって分解されているのだ。

 このまま自壊が進めば、跡形もなく消えるだろう。


 魔王は死んだ。

 百年前の戦いでは傷を負っただけで済んだが、今回は間違いなく消滅した。

 さすがにここから復活することはできないはずだ。


 もっとも、私は魔術の専門家ではない。

 何らかの裏道で蘇生する可能性もまだ考えられる。

 その時はその時だ。

 報復を企むような再び抹殺するだけなので、困ることは何もなかった。

 一度は死に追い込んだのだから、契約は果たしたと言えるだろう。


「ふう。危なかったですね。もう少しで殺されるところでした」


 私が笑顔で述べると、呆れを含む声が指摘を挟んできた。


『嘘を言うな。余力の方が多いくらいだろう。汝と魔王の実力差は圧倒的だった』


 発言したのは聖剣の化身シアレスだ。

 現在は私の腰に吊るされた彼は、一部始終を目撃した。

 その上で戦いの考察をしていたようだ。


 私は飄々と会話に応じる。


「察しが良いのですね」


『これでも聖剣の化身なのだ。力量くらいは感じ取ることができる』


 シアレスは誇らしげに答える。

 聖剣とは悪しき存在を滅するために生まれた武器だ。

 瘴気や魔力の感知能力については研ぎ澄まされているのだろう。

 ある種の索敵装置としても運用できそうだった。


(まあ、私にとっては不要ですがね)


 聖剣はエルフの森に置いていくつもりだったのだが、長老に半ば強引に押し付けられた。

 表向きは私への感謝の印と主張していたものの、向こうの本音は透けて見える。


 ようするに聖剣を預かる立場を放棄したいのだ。

 そもそも闇の秘宝を封じるという役目がなくなった以上、森で保管する意味はない。

 しかも最高品質の武器であるため、それを狙う輩が現れる恐れがあった。

 今となっては争いの種にしかならないと考えて、私に譲渡したのだ。


 私は聖剣を携えて荒野を歩く。

 このまま魔族の支配域を抜ける予定だった。

 途中、シアレスが私に尋ねる。


『剣聖リゼン。汝は世界を救ったわけだが、これからどうするつもりなのだ』


「もちろん次の契約を探しますよ。ハイエルフの長老と交わした分は完了しましたから。魔王は良き雇用主になってくれそうでしたが故人ですし」


 そこまで答えたところで大切な用事を思い出す。

 私は手を打ってシアレスに告げた。


「その前に、あなたを今代の勇者に渡しましょう」

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― 新着の感想 ―
[良い点] この主人公のブレない在り方が好きです
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