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第17話 極限格差

 怒り狂う魔王が大魔術を展開する。

 上空に無数の氷の球が現れて浮遊した。

 少なく見積もっても千は下るまい。

 一つひとつが小さいため、まるで雨のようになっていた。

 魔王が指を動かすと、それに従って氷球が高速で落下して私に襲いかかってくる。


「魔術による飽和攻撃ですか。まあ妥当な対策ですね」


 回避行動を取りながら分析する。

 魔王が最も恐れているのは私の斬撃だ。


 ほぼ無制限に伸びる間合いと、一発で瀕死まで追い込まれる破壊力。

 身を以て味わっているので尚更に警戒していることだろう。


 だからこそ魔王は、術の連打で封殺しようとしている。

 手数で押し込むことで斬撃を放つ隙を与えないように牽制しているのだ。


(確かに合理的な判断です。こちらの劣る点を端的に見抜いている)


 私は紛うことなき人間だ。

 剣術は優れている自信があるものの、根本的な身体機能は魔族のそれとは比べるまでもなく弱い。

 小細工で差を埋めているが、些細な傷が致命的になる場合もある。


 我ながら決して無敵ではない。

 もちろん戦いで死なないための努力は徹底している。

 それでも完全無欠ではない以上、どこかで命を落とす可能性は付きまとってくる。


 無論、今この瞬間もそうだ。

 縦横無尽に動き回る氷球は、相当な破壊力を秘めている。

 大地を軽々と粉砕しながら追尾してきたり、時には死角から直線的に飛んでくる。

 一度でも命中すれば形勢は逆転しかねなかった。


(もっとも、そのような展開は訪れませんがね)


 私は無数の氷球を剣で防御しながら、離れた地点を陣取る魔王を見る。

 何重もの防御魔術を固めて待機していた。

 魔力消費を抑えつつ、不意の斬撃にも対応できるように構えているのだ。

 よほど前回の敗北が尾を引いているらしい。


「さて、そろそろこちらから仕掛けましょうか」


 私は氷球を避けながら加速して、魔王へと急接近する。

 すると魔王は歓喜しながら両手を掲げた。


「来たな! やはりそう来ると思っていたぞ! 汝なら距離を詰めてくると予想できていたッ!」


 前方で爆発が起きた。

 そこから噴き出してきたのは白い炎だ。

 炎は激しくゆらめきながら渦巻いて拡散し、すべてを燃やし尽くそうと猛威を振るう。


 魔王が罠を仕掛けていたらしい。

 こちらの接近に合わせて発動する炎の術で確殺を狙っていたのだ。


 白炎の向こうに勝ち誇る魔王の顔が見えた。

 作戦が成功してよほど嬉しいようだ。


 だから私は、冷徹な微笑と共に呟く。


「――あなたが予想できていたということを、私も予想できていました」


 この身を巻き込もうとする炎を前に剣を往復させる。

 二度の斬撃は豪風を伴って白炎を両断し、魔王へと続く直線の道を築き上げた。

 私は白炎の中を突っ切って進んでいく。

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