第13話 究極剣技
私と聖剣の化身シアレスは、封印の地で高速戦闘を繰り広げる。
刹那の間で数え切れないほどの攻防を展開していた。
僅かにでも気を抜けば命を落とす。
それを確信しながらも、私は冷静に対処した。
シアレスの繰り出す聖剣の斬撃を的確に防いでいく。
(複合された剣技……まるで数十人の戦士と戦っているようです)
戦闘前の話を信じるなら、シアレスは歴代勇者の技を習得している。
それらを自在に使いこなして、私の動きに合わせて剣技を切り替えていた。
実に面倒な戦法だ。
対応力で言えば過去の勇者をも凌駕する。
相手が私でなければ、とっくに敗北しているところだろう。
(いやはや、面白いですね。このような強者が眠っていたとは)
私は致死の連撃を捌きながら微笑む。
このひりつく感覚が堪らない。
七度の攻撃しか許されない私は防戦一方だった。
しかし、互いの刃を合わせるたびに喜びを感じている。
加速する攻撃が命を掠めるたびに力が沸き上がった。
「ああ、最高です……」
契約がどうにも忌々しい。
制限がなければ存分に剣を振るっているところだ。
そして靄を滅多切りにして聖剣を下す。
なんと素晴らしいことだろう。
想像するだけで滾ってくる。
だが、私は契約を厳守しなければならない。
契約によって理性を保っているのだから……。
そのようなことを考えていたせいか、剣を握る腕がほぼ無意識に攻勢へと移った。
滑らかな旋回によってシアレスの聖剣を躱すと、切っ先で靄の身体を貫く。
ちょうど脇腹にあたる位置だ。
貫かれたシアレスは、その箇所を押さえながら後方へと跳ぶ。
「クハッ!?」
脇腹に裂け目ができて、そこから魔力が漏れている。
人間で言うところの出血だ。
化身シアレスは靄に似た身体を持つ。
通常の物理攻撃は効かないのだろうが、魔力を流した刃では傷付くのだった。
(非物質系の存在の倒し方としては定石ですね)
私は自然体で剣を持ちながら微笑する。
シアレスは脇腹を気にしながら聖剣の構えを変える。
あれは防御主体の構えだ。
今の一撃で警戒心を植え付けることに成功したらしい。
私は態度を崩さずに挑発する。
「あと六回の攻撃で決めます。歴代勇者の剣技も大したことがないですねぇ。名も知れない傭兵に負けるなんて名折れでは?」
「――汝を屠ることで、再び最強を宣言しよう」
シアレスは己に言い聞かせるように答える。
膨れ上がる殺気に加えて、激しい怒りが渦巻いていた。