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第119話 事の顛末

 地上に戻ると、勇者パーティーが戦闘していた。

 魔導国の軍隊との攻防だ。

 互いに状況が分からずに争っている状態だった。

 とにかく目の前の相手を倒さねばと息巻いた結果、膠着状態を挟みながら殺し合っていたらしい。


 諸悪の根源はもういないというのに、なんとも不毛な展開である。

 とりあえず私が仲裁することにした。

 一太刀で両陣営を黙らせると、復活した魔神は勇者が倒したと通達する。


 そうして混乱する彼らを差し置いて、私は魔導国の王のもとへ向かった。

 怯える王を連れて個室で話し合いを始める。


 此度の被害や魔神ウィスの陰謀について、私は懇切丁寧に説明した。

 そして、これ以上の技術発展が起きないように約束させる。

 もし破られれば、警告なしで侵略を開始すると宣言しておいた。


 国王は泣きながら承諾した。

 床に頭をこすりつけながら謝罪した上、多額の賠償金を押し付けてきた。

 これで命が買えれば安いと考えたのだろう。

 私は金を受け取らず、それで民の生活を支えるように助言して後にする。

 依頼以外で余計な金を貰うのは信条に反するのだ。

 王の謝罪を受け入れる気も無い。


 とにかく、これでシアレスからの依頼は完了した。

 諸悪の根源である魔神は死んで、技術提供を行った魔導国も脅迫した。

 さらなる陰謀を企むなら制裁が必要だが、当分は大人しくしているはずだ。

 余計なことをしそうなら、その時に手を下すだけである。

 仕事の対応としては十分と言えよう。


 今後、魔導国の暗躍は明るみになる。

 魔神復活の計画も他国に知られるはずだ。

 当然ながら批判が紛糾するだろうが、魔導国には甘んじて受けてもらうしかない。

 ウィスに唆されたとはいえ、魔導国が一線を越えてしまったのは間違いないのだから。

 私欲に目が眩んだ結果、世界を滅ぼしかねない状況にした。

 国家間の立場が悪くなるのも承知で反省してほしい。


 次に私は魔導国の格納庫から飛行船を拝借し、砂漠の大陸を目指して飛び立つ。

 あそこには協力者である監獄の人々が待っている。

 彼らがどうするのか定かではないものの、魔導国を離反して新たな人生を送りたい者もいるだろう。

 その一助になれればいいと思う。


(いやはや、我ながら今回は働き者ですね)


 基本的に契約で決められていない行動は取らない主義だが、たまには気を利かせていこうと思う。

 ちょうど次の契約も空いている。

 これくらいのお節介なら焼く時だってあるのだ。


 現在の私は気分がすこぶる良い。

 魔神を殺し合いができたからである。

 あれほど強い相手とは滅多に出会えないだろう。

 華麗に勝利できたので、心身が心地よく満たされている。

 無償の善行を躊躇わないくらいに上機嫌だった。

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