表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一太刀につき金貨一枚 ~守銭奴の剣聖は勇者パーティーを追放されたので気ままに生きることにした~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/122

第118話 終戦

 勇者は消滅していく魔神を見届ける。

 そして足腰から脱力して崩れ落ちてしまった。

 彼は気の抜けた顔で天井を見ながら呟く。


「やっと倒せた……」


 張っていた緊張が解けたのだろう。

 極限状態が続いていたのだ。

 そうなってしまうのもよく分かる。


 勇者が崩剣を手放して、聖剣だけを鞘に納めて抱いた。

 彼の判断は正しい。

 聖剣は持ち主の肉体強化と回復を促す。

 双剣の負担を迅速に治すにはそれが一番だった。


 私は勇者のもとに赴いて賛辞を送る。


「お疲れ様です。素晴らしい勇姿でしたよ。血統に恥じない活躍ぶりでした」


「あんたがいなけりゃ、絶対に勝てない戦いだった……俺はまだ未熟だ」


「それでも半人前は脱しました。誇っていいと思いますよ」


 私は優しく語りかける。

 勇者は照れ臭そうにそっぽを向いた。

 しばらくして彼は、ぽつりと疑問を口にする。


「これで世界は平和になるのか?」


「さあ、どうでしょう。悪など腐るほど転がっていますからねぇ。魔神以外にもたくさんの怪物が息を潜めているでしょう」


「……くそ。休む暇はなさそうだな」


「悪党を倒すつもりですか」


「当然だろ。俺は勇者だ。自分の役割は分かっている。偶像として終わるつもりはねぇよ。人類に仇為す奴らは、まとめてぶっ潰してやる」


 勇者は顔を明後日の方角に向けながら言う。

 冗談めかした口調でも、理想に酔い痴れた口調でもない。

 彼はただ覚悟と事実を述べていた。


「良い心掛けです。必要なら私も呼んでください。報酬次第で駆け付けますよ」


「助かる。その時は金貨五百枚でも千枚でも用意しておくさ」


「太っ腹ですねぇ。ではまたの共闘を楽しみにしています」


 私は笑いながらその場を立ち去る。

 地上への階段を上がろうとした時、後ろから勇者の声がかかった。


「おい、崩剣を忘れてるぞ」


「あなたに譲ります。切り札として使ってください。ナイアさんも構いませんね?」


『うむ……この勇者は頼りないからな。吾が鍛え上げてやるのじゃ』


『我も助力する。歴代勇者を超える力を身に付けてもらおう』


 シアレスとナイアも未だ成長過程の勇者を気に入ったようだ。

 当の勇者は少し恨めしそうに私を睨む。


「……あんたのせいで過労死しそうだ」


「いいじゃないですか。葬式には出席しますよ」


 私はひらひらと手を振りながら階段を上がる。

 勇者の笑みを見届けてその場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! >『うむ……この勇者は頼りないからな。吾が鍛え上げてやるのじゃ』 >『我も助力する。歴代勇者を超える力を身に付けてもらおう』 >シアレスとナイアも未だ成長過…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ