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第109話 剣聖の策

 ウィスが何かする前に、私は千回分の斬撃を同時に叩き込む。

 瘴気の身体が粉々になった。

 修復しようとするそばから崩壊していく。


「むおっ」


 ウィスが声を上げた。

 高速で再生しようとしているので、さらに千回分の斬撃を浴びせる。

 反応できない瘴気が霧散した。

 人型に戻ろうとしているが上手くいっていない。

 困惑するように地下空間を彷徨っている。


 シアレスが緊迫した口調で呟く。


『現状、我の能力でも完全消滅までは至らせられないぞ……』


 ウィスが修復に難儀しているのは、聖剣の力で妨害しているからだ。

 破壊力を私の斬撃回数に任せて、浄化の方面に特化させてみた。

 結果として再生に時間がかかるようになったのである。


 ただし、これでもウィスは殺せそうにない。

 シアレスの指摘通り、完全な消滅に至らせるには力が不足していた。

 絶対的な格差が存在している。

 技量では圧倒しているのに、勝利があまりにも遠い。

 私にとっては初めての経験だった。


 考えている間に漆黒の炎が飛来する。

 私は躱しながら二千回分の斬撃を放った。

 盛る炎と再生し始めたウィスをまとめて粉微塵にする。


「く、ふふ……馬鹿の、一つ覚えだな……完全体の、僕を……殺すなど、不可能なの、だよ」


「どうでしょうね。まだ分かりませんよ」


 私は三千回分の斬撃を叩き込みながら呑気に言う。

 ウィスの修復速度が徐々に上がっていた。

 浄化の耐性ができつつあるらしい。

 粉々にはできているが、だんだんと効きにくくなっている。


(いずれ攻撃が通じなくなりますね)


 私は六千回分の斬撃でウィスの突撃を封じながら推察する。

 瘴気の身体は複雑に形を変えながら斬撃を受け流そうとしていた。

 まだ失敗気味だが適応の兆しがある。


 ウィスもただやられっぱなしではない。

 魔神由来の耐性に頼らず、頭脳で私を凌駕しようと画策している。

 その並々ならぬ執念に魔性の力が噛み合って、とてつもない脅威と化していた。


『剣聖リゼン……』


「大丈夫です。まだ終わりませんよ」


 心配そうなシアレスを宥めながら一万回分の斬撃を放つ。

 超圧縮された攻撃はしかし、ウィスの身体を素通りしていった。

 いや、正確には斬られた端から修復されて、あたかも素通りしたかのように見えたのだ。


 私の攻撃速度を、魔神の再生速度が上回った。

 その事実を突き付けられても、動揺することはない。

 ただ聖剣を下ろして微笑を浮かべてみせる。


 一方でウィスは含み笑いをしながら近付いてきた。

 瘴気の化身となった彼は、勝ち誇った様子で話しかけてくる。


「く、くく……それが、限界かな。僕はまだ死んでいないよ」


「限界ではありませんが交代しますね」


 私はひらりと後方へ退いてみせる。

 同時に半壊した入口から現れる人影があった。


「……遅くなった」


 そう言って降り立ったのは、崩剣を持つ勇者だった。

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