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第10話 剣聖の力

「ほう、あれが聖剣ですか」


 私は台座に歩み寄ろうとする。

 それをすぐさま長老が止めてきた。

 彼は前方を睨みながら指摘する。


「これより先は危険じゃ。多重の防衛魔術が張ってある。迂闊に近付くと死ぬぞ」


 長老の言葉を受けて、私は台座までの道のりを凝視する。

 意識を集中させていくうちに、不自然な魔力の流れを感知できた。


 指摘通り、いくつもの防衛魔術が展開されている。

 許可なく聖剣に近付けないようになっているようだ。

 無策で触れようとすれば、手痛いしっぺ返しを受けそうな予感がした。


(かなり厳重ですね。聖剣と秘宝の希少性を考えれば当然ですが)


 どちらも唯一無二の代物だ。


 聖剣はかつて魔王を滅ぼした魔術武器で、世界最高峰とも言える破格の性能を誇る。

 剣が使い手を選ぶとされる特性も相まって、誰でも気軽に使える武器ではないが、その強さは間違いなく超一流だった。

 復活した魔王の討伐も、聖剣ありきという意見が多いらしい。


 一方で闇の秘宝は正反対の立ち位置にある。

 邪悪な力の根源で、破壊不能の呪物だ。

 魔王すらも求めるその効果は莫大だった。

 仮に人間の魔術師が手にすれば、能力は大幅に向上して歴史に名を残すほどの術者になれると言われている。


 この辺りの話は魔王の受け売りだった。

 秘宝がいかに必須なのかを説明された時の情報である。


 そのような光と闇の宝物が、私の目の前に鎮座していた。

 秘宝はどこにもないように見えるが、おそらく台座の下に埋まっているのだろう。


 長老は仁王立ちで両手を合わせる。

 そうして魔力を高めながら周囲に干渉し始めた。


「今から防衛魔術の解除を始める。少し時間はかかるが、安全に秘宝の回収ができるはずじゃ」


「お気遣いは不要です。ここは私にお任せを」


「何をするつもりだ」


「迅速に事を運ぶだけです」


 私は長老の制止を無視して進み出ると、ゆっくりと剣を引き抜いて掲げた。

 そして聖剣を守る魔術を残らず認識しつつ、そのすべてを叩き斬るために力を蓄積していく。

 漲る魔力は腕から刃へと浸透し、斬撃の威力を底上げする。


 私には防衛魔術を解く知識や技能はない。

 だからこの剣で破壊する。

 長老に任せるとかなりの時間を要しそうなので、手っ取り早い手段で訴えることにしたのだ。


 どうせ私が秘宝を回収すれば、ここに防衛魔術がある意味もなくなる。

 木端微塵に粉砕したところで迷惑はかかるまい。


 ところが、長老はしつこく止めようとしてきた。


「よ、よせ。攻撃すれば防衛魔術が起動する。お主も無事では済まぬぞ」


「大丈夫です。私もそれなりに強いので」


 私はそう言いながら剣を振り下ろした。

 魔王も瀕死にする斬撃は、幾多もの防衛魔術を破壊していく。

 迎撃術式が発動する前に割り、構築された魔力を連鎖的に断ち切った。

 余波で樹木が削れて暴風が吹き荒れる。


 そのような中でも、肝心の聖剣は無事だった。

 台座も健在で堂々と突き立っている。

 私は威力を上手く調節して、防衛魔術だけ切り裂くように意識していた。

 その試みは成功したようだ。


「さて、さっさと回収してしまいましょう」


 呆気に取られる長老を置いて歩き出そうとする。

 刹那、妙な力の奔流が聖剣に集束した。

 そして靄のような人型を形成する。


(この気配は……?)


 防衛魔術はすべて破壊したはずだ。

 それにもかかわらず、不可解な現象が発生しようとしている。


 半透明の靄は、音もなく聖剣を抜き放った。

 そして、悠々とした動きで構えを取ってみせる。

 感じる視線は敵意に満ちていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第10話到達、おめでとうございます! [気になる点] >「これより先は危険じゃ。多重の防衛魔術が張ってある。迂闊に近付くと死ぬぞ」 長老がわざわざ警告をしたのは、警告せずに剣聖が生き残っ…
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