神様と少年
-6-
私はその日初めて人工物に触れた。これが家というものか。雨や風から身を守ることができそうだ。
「兄ちゃん何やってるの?こっちきて、一緒に寝よう。二人の方が暖かいよ」
「私が近付いてもいいのか?」
「うん!もちろんだよ」
私は人間に一歩近づいた。人間は創造主と違って、私が近づくのを許したのだ。だからこそ、私はもう一度言わなくてはならないだろう。すっかり重くなってしまった口を私は開く。
「私は君の兄ではないよ。人間」
「うんわかってるよ。兄ちゃん」
笑いながら人間はいった。
「本物の兄ちゃんはぼくのこと助けてくれないよ。
ぼく本当の兄ちゃんに囮にされたんだ」
この人間は兄というものに、良い感情がないようだ。
明るさの中に暗さがにじむ。だから、私は疑問に思った。
「なぜ私を兄と呼ぶ?お前の本当の兄は、お前を助けてくれなかったのだろう」
「あなたが、僕の理想の兄ちゃんみたいだったから!それじゃダメなのかな?」
「…いや、問題ない。人間さえ良ければ、一緒にいよう」
私はつい、創造主とこの人間を重ねてしまった。
「ありがとう兄ちゃん!」
人間は明る笑顔を取り戻した。よかった、創造主似た顔で泣かれると良心が痛む。
「おやすみ兄ちゃん…」
私は安心して眠る人間を見た。この創造主に似た人間は、私を拒絶しないのだ、もう少し一緒にいてもいいだろう。
「おやすみ、少年」