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神様と弟
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ゼロは遠くを見ながら、私に話しかけた。
その笑顔に、仄かに影がさす。
「ぼく、兄ちゃんとここで過ごしたかった。兄ちゃんに見せたいものいっぱいあったんだ」
私は耐えられなくなり、主人の手にふれた。
「…兄ちゃん?」
「ゼロ。思い出ならこの家じゃなくてもつくれる。私はゼロと一緒にいるのだから」
「兄ちゃん!」
ゼロは私に飛びつく。一瞬の衝撃の後、私はゼロを受け止めた。
私の腕の中で小さなゼロは、はっきりとした声で言った。
「この家で見つけたこと、兄ちゃんにも見て欲しかった。だけどぼくは、兄ちゃんと一緒にいられるだけで、それだけで幸せだから!」
「…ゼロ」
「ぼくはもう大丈夫。兄ちゃんと思い出を作れるのは、ここだけじゃないからね!」
ゼロは私から離れると、私の片手を握った。
ゼロの暖かな手で、私の心は落ち着く。
私はゼロに、聞こえないくらい小さな声で呟いた。
「これでは私が弟みたいだな」
ゼロが上を指差す。その視線に先には流れ星。




