神様と赤い石
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夢の中は真っ白で、私以外のものはまだない。
そこに、主人の声が響きわたる。
目覚める時間がきた、私は意識を覚醒させる。
「おはよう兄ちゃん。聞いてほしいことがあるんだ…」
朝起きたら、悲しそうな顔の主人が目の前にいた。
昨日まで、明日からの生活が楽しみだと語っていたのだが。
「おはようゼロ。どうした?」
「ぼくたち、この家にはいられないことになったよ」
ゼロはそう言いながら、私に紙を手渡した。
植物性の紙に手書きで書いてある。急いで書いたのか、文字がかすれて見えづらい。
「…この土地で、希少な鉱石が見つかった。住民は即刻立ち去るように」
「ごめん。僕がいけないんだ。この間、知り合いの子にコレを見せちゃったから…」
ゼロは赤い石を私に渡した。石には魔力がたまっているようで、仄かな熱を感じとれた。
「この石がどうしたんだ?色は綺麗な赤色のようだが」
こんな小さな石一つで、主人が家を出て行く理由にはならない。
「兄ちゃん。これは普通の石じゃないよ。色んな人たちが欲しがるんだ」
朝焼けにすかして見れば、魔力が石の中でうごめく姿がよく見えた。まるで生き物の中をめぐる血のようだ。
「この石の名前は神紅石。この世界で一番大切にされている石。神さまが流した血の一滴」




