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至福の時間
「うふふ、うふふ、可愛いですねぇ~」
バックパックからエサを取り出し、猫達に速やかにお配り申し上げた。
こんな姿をもしキャロラインに見られたら、さすがに恥死するかもしれない。
「おっふ、やめて、やめて~」
膝に乗ってきた猫に甘えられ、押し倒される。すると、他の猫達も寝そべった体に乗ってくる。参った。完全に制圧されてしまった。
まぁ、いいか。身バレ対策もしているし、今はこの幸せを噛みしめよう。
今日は街中に落ちていたゴミも拾い集め終わったし、一日一善始めた頃のようにバカ共に絡まれることも無くなった。のんびりしても構うまい。
だが、幸せな時間は長続きしないものだ。
クルスは目の端で、女性がバンに引きずり込まれるのを見た。
瞬時に立ち上がる。
猫たちが体から飛び上がる。
「ああ、ゴメンゴメン」
謝りながらも、目はバンを追っていた。
体は機敏に、まるで自動的であるかのように動き、ママチャリにまたがる。
そして、瞬時に爆発したような砂塵を巻き上げ、クルスはバンを追ったのだった。