表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
窓ガラスの話  作者: 宵街
2/2

何故会えない?

その日1日、昴くんが窓ガラスに姿を現すことはなかった。


一体何故なのか。そんなの分かるはずがない。

・・・・・・というか、もしかしたらあれは夢だったんじゃ?

だってあんなこと、現実で起こるはずがない。


窓ガラスにそっと触れてみる。


うん、なんの変哲もない窓ガラスだ。映っているのもなんの特徴もない平凡な俺の顔のみ。

夢・・・だったのか・・・?本当に?


「・・・」


夢だったと思えば思うほど、昴くんという人物が本当にいたのかどうか分からなくなってくる。


しばらく窓ガラスに手を付けながら、呆然としていると下の階から母親の「ご飯だよー」という声が聞こえてきた。

俺はのそりと立ち上がり、チラリと窓ガラスに目をやり下へ降りていった。


食卓には俺の好物ばかりが並べられていた。

しかし、今は夕飯のことよりも窓ガラスのことが頭をチラついて離れない。

ご飯を口に含みながらも俺は昴くんのことを考え続けた。


母親の「明日は雨らしいから傘持っていきなね」や「あんた今度のテストいつなの」といったことに対し、適当に相槌を打ちながら考えを巡らせていく。


もしかしたらまた窓ガラスを見たらいるかもしれない、と思い急いでご飯を胃に押し込んで2階に上がって窓ガラスを見るも、やはり何も映ってはいなかった。


・・・やはりあれは夢だったのだ。

窓ガラスに人が映るなんて、ありえるわけないもんな。

きっと、疲れが溜まっていたんだろう。

ゆっくり寝れば、もう夢を見ることもなくなるはず。

そう思いたったため、俺は


「ぐぅ」


もうそのまま勢いで寝た。




翌朝起きると外は雨が降っているようで、ザァザァという雨の音。

それに加え、何かを叩く音が聞こえた。


「・・・?なんの音・・・・・・」


カーテンを開くと、そこには、


ドアップのイケメンの顔が。


「ひっ!?」


『!薫くん!良かった!また会えた!』


昴くんはホッ胸を撫で下ろすと、優しげなイケメンスマイルを俺に向けた。ま、眩しい・・・眩しすぎて直視できない・・・。

そう思い目を守るように掌で覆うと、昴くんが『目が痛いの?』と心配してくるものだかな、覆うのは止めた。


『はぁ・・・でも良かった~。

・・・うん、やっぱり、そうなんだ』


と1人で勝手に何か納得する昴くん。

待って待って。俺全然分かってないから。


『薫くん。雨だよ』


ん?雨?確かに降ってるけど、それがどうかしたのか?


『この窓ガラスは雨が降っている時にしか、薫くんとの世界を繋げられないんだ、きっと』


あぁ~なるほど。

・・・うん。そうなの?


『現に昨日は会えなかったしね。確証はないけど、今のところそうだとしか考えられないよ』


「うーん・・・確かに・・・・・・」


昨日は雨降ってなかったし、何よりイケメンの言うことだ。きっと正解。


『でも、残念だったなぁ。昨日だったら話す時間はたんまりあったのに、今日は学校あるから』


「俺も。ってこんなに呑気に話してる場合じゃない!」


バッと時計を見ると針はもうじき8時を誘うとしていた。

俺の通っている学校は家からそこそこ離れている。

だから8時前には家を出ていなきゃならないのに・・・!


「昴くんはいいの!?もう8時だよ!?」


まさか向こうの世界とは時間の流れが違うとか??


『あぁ、僕の家、学校にすごい近いんだよね。徒歩5分で行ける距離だから余裕なんだ』



ブイとピースをしている昴くんを見て、手に持っている脱ぎ立てのパジャマを投げつける。

何故って?ムカついたからだよ!


『うわ!酷いなぁ、もう・・・』


呆れたような目で見てくる昴くん。

俺がこんなに焦っているのに余裕そうにしている昴くんが悪い。


俺は制服を手に取り、せかせかと着込む。

すると窓ガラスの方から視線を感じた。

誰の視線・・・なんて昴くんしかいないんだけど。


『へぇぇ、薫くんのとこの制服ブレザーなんだね』


「そうだけど・・・もしかして昴くんのとこは学ラン?」


『そー。僕ブレザーが良かったなぁ』


「無い物ねだりだな。俺も学ランのほうが良かった・・・ってダメダメ。話してる場合じゃないんだって!」


制服が着終わり、俺は鞄を手に取り部屋を出ようとする。


『え、あ、薫くん!帰ってきたら話そうね!』


「雨が降ってたらな!」


バタンと勢いよく扉を閉め、ドタバタと下に降りていった。

その際母親に、「うるさい!」と怒鳴られた。

母さんこそなんでギリギリの時間になっても呼びかけてくれなかったんだよ!と声に出して言うと口論になりそうなので、ぐっと口を噤んだ。俺、偉い。


「行ってきます!」


そう怒鳴って外に出ると、2階の窓から『行ってらっしゃい』と聞こえた気がした。気のせいかもしれないけど。


俺は青色の傘を差しながら、雨はジメジメして嫌いだけど、帰ってくる時には降っていればいいと思った。

まあ、こればっかりは運だからなぁ。


昨日会えなかった分、今日いっぱい話さないと。

よし、授業中やることが決まった。

昴くんへの質問を考えておくこと。大事なことだろ?

それ以外に大事なことある?ないな。


大丈夫。俺、テストは一夜漬け派だから。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ