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窓ガラスの話  作者: 宵街
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窓ガラス同士、繋がりました

その日は大雨で、何処にも行くことが出来なかったから、俺は自分の部屋から窓の外を眺めていた。


(一向に止む気配がないなぁ・・・)


なんて思っていると、ある違和感に気づいた。


右手を振ってみる。窓ガラスに映っている人影はピクリとも反応しない。


なんじゃこりゃ。


俺の目がどうかしてしまったのか?と思い1度目を閉じ、そして開き、恐る恐る窓ガラスの方に手を近づけてみる。


あと数ミリでガラスに触れるというところで、窓ガラスに映った人影が『うわぁ!?』と声を上げた。

突然の大声で俺も驚き「うわっ!」と声を上げ、後ろに後ずさった。


『ぼ、僕じゃ、ない!?え、どういう・・・!?!?』


どうやら向こうも窓ガラスの人影が、自分じゃないことに気づいたようだ。とてつもなくパニクってる。


・・・・・・いや、それにしてもパニクりすぎだ。椅子を手に持っているが、もしかして投げる気じゃないだろうな??


「ちょっ、待て待て待て。ちょっと冷静になろうか」


彼が椅子を頭上まで持ち上げたところでガチで投げようとしていることが分かり、慌てて止めに入る。

椅子が投げられたところでこっちにどんな影響があるか分からないが、良い予感はしないよね。


彼は俺の言葉を聞くと、ピタリと椅子を持ち上げた状態で静止した。


「よ、よ~し。そのままゆっくり椅子を下ろせ」


彼は思いの外従順に俺の言葉を聞き入れ、ゆっくり。それはもうゆっくりと椅子を下ろした。

彼は目をぱちくりさせて『ご、ごめん・・・少し驚いちゃって』と言って謝った。少し?少し驚いたら椅子を投げつけようとするのか?


・・・まぁまぁまぁ、今はそんな細かいことを気にしている場合ではないよな。

とりあえず、まずは自己紹介からか?名前が分からないと不便だもんな。


「と、とりあえず、自己紹介でもしませんか?」


さっきは動揺しちゃってうっかりタメ口だったから、今度はちゃんと敬語を使った。もしかしたら年上かもしれないからな。


『そ、そうだね。僕は横峯 昴。高校2年生。趣味は料理。座右の銘は・・・・・・』


「ちょ、ちょっと待って!とりあえず名前と年齢が分かればいいから・・・・・・」


『あ、そうだね!ごめん、余計なことまで・・・・・・』


「いや、余計なことってわけじゃないけど・・・・・・」


なんとなくしょぼんとする昴くんを見て、こっちもしょぼん。

いやいや、なんでやねん。


「えーと、昴・・・・・・くん!でいいよね?俺は九ノ瀬 薫。年は同い年だな。皆薫って呼ぶから薫でいいよ」


そう言い終わってから、自分が窓ガラス相手に手を差し出していたことに気づき、ハッとする。

昴くんはキョトンとした顔をしてすぐ、クスクスと笑いだした。


『薫くんて、天然なの?』


「・・・・・・昴くんには言われたくないかも」


ムッと頬を膨らませて見せると、『あはは、可愛いね』と滅多に男に使わない言葉を言われた。

まぁ、このやりとりのおかげで、変な緊張は和らいだけど。問題は解決していない。


どこに住んでいるのかと聞けば、全く知らない地名だし。

こっちで聞いたことがない食べ物も昴くんの世界ではあるようだし。

ちょいちょい、似たようで似ていない世界が何故か、俺と昴くんの部屋の窓ガラスが繋がってしまったようだ。


『本当に謎だよね。そっちの科学がとても発達しているとか?』


「ないない。昴くんの世界は?」


『なくはないね』


「まじか」


それじゃん。と思ったが、昴くん曰く、こんな形での異世界の繋ぎ方は知らないとのことだった。別の形の繋ぎ方はあるのかと聞きたくなったが、今は聞かないでおこう。


『というか、もう夜遅いけど、寝なくて大丈夫なの?』


「はっ!明日学校・・・・・・!昴くんはいいの!?平日だし学校あるでしょ?」


『フフ、こっちの世界は明日休みなんだよ。国民全員仕事も何もしない日』


「何それ!羨ましい!」


『そうでもないよ。本当に誰も何もしないんだ。街中なんて物音1つしなくなるんだよ。すごい退屈』


へラリと困ったように笑う昴くん。

そういう日が週1であるらしく、その日に仕事なんてしようものなら罰せられるらしい。すごい世界だ。


『でもそっかぁ。薫くんの世界はそういう日がないんだね。やっぱり所々違うところがあるんだね』


「本当・・・・・・ってゆーか。もしかして、この窓ずっとそっちと繋がってるのかな・・・・・・?」


『かもね。あ、でもカーテンあるし、プライバシーは守れるよ!音は・・・ちょっと難しいかもだけど!』


「そ、そうだね。そうする・・・・・・。じゃあ、俺朝早いから寝るね」


『うん。また明日ね。どうせ明日暇だし、学校から帰ってきたらまた話そうよ』


「うん。おやすみ昴くん」


『おやすみ、薫くん』


シャッとカーテンを締めると、当たり前のことながら昴くんの姿が見えなくなる。


出会い方は特殊だったけど、今日新しく友達が出来た。

異世界の。


俺は何時間ぶりに部屋を出て、洗面台に行き歯を磨く。

洗面台のガラスを見ながら昴くんのことを思い浮かべる。


話してる時は気づかなかったけど、昴くんって中々イケメンだったなぁ。美形の部類に入るイケメン。


それに対し俺はなんだ。平凡中の平凡っていう顔。

・・・・・・あんな風に物腰柔らかで、若干天然でイケメンとか、モテるんだろうなぁ。


水で口を濯いでのそのそと自分の部屋へ戻る。


青いカーテンで窓ガラスは見えないが、カリカリと音がする。

勉強でもしているのだろう。イケメンでさらに勤勉要素も備わってるとか、ハイスペック過ぎるよ・・・・・・昴くん・・・・・・。


ムーと枕に顔を押し付け唸っていると、『薫くん?大丈夫?』と心配そうな声が聞こえてきて、慌てて「大丈夫!」と答える。

まるで同居しているようだ・・・・・・まぁ、そこまで悪い気はしないからいいんだけど。


窓ガラスの外はまだ雨が降っているようで、ザァザァと音がする。

明日の朝には止んでるといいな。

そんなことを思っていたらいつの間にか俺は眠ってしまっていたようだ。










朝、目が覚めカーテンを開くと、気持ちいいくらいの晴天で、




その窓ガラスには俺の姿しか映っていなかった。

読んで下さりありがとうございます!

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