今の私って情緒不安定なの?
勝負の結果は気になるけど、私にも生活がある。
ようやく慣れてきた制服に着替えて、高校に行って――。
「ああっ、でも、結果が気になるぅ……」
「ちょっと小町、大丈夫?」
「あ、うん。何でもないよ」
高校生になって2週間ほど経過し、仲の良いグループも出来てきた頃だ。
私にも友人ができ、今も席の近い数人で会話している。
けど、話の内容よりも昨日のゲームが……レースの結果がぁ……。
「いつにも増して情緒不安定じゃない?」
「小町にはいつものことよ」
「それもそうね」
「ちょ、酷いよ!」
ちなみに彼女たちにはアヴァロン・トラジティを買ったことは話していない。
話しても良いのだけど、ゲームに関しては興味なさそうな反応をするし、何より――。
「よう! 俺も昨日、ようやく新しいスキル覚えたんだぜ!」
「確か大和ってソードマスターだったろ? 何を覚えたんだ?」
「それがよ、チャークラ」
「チャクラ? エネルギーでも練るのか」
「いやいや、チャークラだってチャークラ!」
……近くの男子がうるさい。
私は平和に過ごすって決めているんだ。
声にうんざりする友人の顔を見ていると、彼らの仲間だと思われるのは嫌。
「でさー、今日の放課後なんだけど」
「今日はバイト無いから、あそこ行かない?」
「ちょうど行きたいと思っていたから行こうよ!」
「でさー、新作のデザートが……」
「昨日、アヴァロン・トラジティのレース見たか?」
ガタッ!
男子たちから聞こえた言葉に、思わず立ち上がる。
それを怪訝そうな顔で見る彼女たちと、チラッと視線を向けたけどすぐに戻した男子グループ。
……やばい、つい反応してしまった。
「ど、どうしたの?」
「お、お手洗いにいってくるね」
「私達もいこうか」
「そうだね」
咄嗟の理由だったけど二人もついてくる。
ああっ、移動途中に話を聞こうと思っていたのに!!
「あれはすごかったよな。まさかエースが……」
「掲示板も大盛り上がりだったな。いつものことかと思ってスルーしたのが残念だ」
「………………」
「どうしたの小町、行かないの?」
「あ、うん。行くよ」
私は結果が知りたいのに、彼らの話はレースの内容ばかりで先に進まない。
「小町ー?」
「ごめんごめん!」
「あの少女、何者なんだろうな?」
多分それ、私です。
ああっ、もう! 気になるじゃないの!
こうなったら直接彼らに聞くしか。
話したことはないけど大丈夫だよね?
「ごめん。先に行ってて。席に忘れ物しちゃった」
「え? あ、そっか。わかった」
「もし何なら、私の予備あげるから安心してね」
……何と勘違いされたんだろ。
まあいいや。これで大丈夫。
「ねえ」
「ん、高木さんだっけ、何か用?」
「どうしたの?」
さっきまでチャークラ! チャークラ! と身振り手振りで騒いでいた男子も、声を掛けると普通に対応してくれる。
意外と紳士的?
「レースって言っていたけど、結果は?」
「何でそんなこと? もしかして高木さんもプレイヤー?」
「おかしくはないけど、耳が早いね」
これ、もしかしてバレちゃった?
……甘ロリ衣装で貴族令嬢っぽい魔法少女が私だと知られると。
うん、誤魔化そう。
「ちょ、ちょっと友達から聞いたの! その娘がレースの結果知りたがっていたから、よかったら教えてもらえる?」
「え! よかったら誰か教えてよ。貴重な女性プレイヤーだしさ!」
「おい、がっつきすぎだろ。引いてるぞ」
……たしかに引いた。
これはカミングアウトしたら面倒くさいことになるわ。
「レースは魔法少女が勝ったみたいだよ。驚きだよね」
「だな。そいつも暴走族の一員になるだろうけど……何考えるんだろうか」
「……そう。ありがとね!」
昨日の勝負、私の勝ち!
フフ。フフフフフフ。
強制ログアウトされたけど、あいつに勝っていた!
「フフフフフフ……」
「小町、なんか気持ち悪くなってるけど?」
「体調の問題じゃないのね。もう放っておきましょう」
……席に戻ってからもこんな状態の私は、とうとう友人にも放置された。
今日は寄り道せずに家に帰ろうかな?
結局体調不良を理由に断り、すぐに家へと帰宅した。
親への挨拶もそこそこにゲームを――。
「こら。夕飯食べてからって約束でしょ?」
「う……でも」
「今日は早めに作ってあげるから、出来るまで宿題でもやっておきなさい」
「わかった」
高価な買い物だったので、買ってくれた親には逆らえない。
逆らってゲームを取り上げられるよりはマシだよね。
そして宿題も途中まで終え、夕飯を食べる。
ここは時間をかけずに……というわけにもいかないので、焦る気持ちを抑えてゆっくりと。
やることはやった。
あとは横たわって、装着。
「何だか疲れたな――アクセス!」
――確認します。
――おかえりなさいませ、タカマチ様。
――そして、いってらっしゃいませ。
強制ログアウトを食らったといっても、返されるのは最後に立ち寄った街だ。
これがフィールドとかだったらすぐに死に戻りしそうだしね。
「ん? 何か、注目されてる?」
話しかけられはしないけど、チラチラと視線は感じる。
もしかして昨日のレースが既に話題になっているのかな?
それとも、そんなに魔法少女が珍しいのかしら?
けど、私には普通の攻撃スキルはないし、地雷だとパーティ断られるくらいだから気のせいよね。
聞き込みはしたいけど、誰も話しかけはこない。
それどころか、近付こうとするとそそくさと道を開けられる始末。
「私、避けられてる? でも何で?」
とりあえず今は、勝利の美酒!
それに流星さんと久我さんに話も聞きたいし、まずは酒場よね!