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これが私の全力全開、フルバーストなの!

 

 不本意なレースだけど、今の私は挑戦者だ。

 彼がスピードキング? 


「たかがAGI700でキングだなんて、笑わせてくれるじゃないの!」


 流星には大きく引き離されたせいで、その背中も既に見えない。

 コースはここの端から端までといったけど、あとどのくらい残っているのかしら?


 実況よりも周回スタッフが欲しかったくらいだ。

 ま、私のやることは変わらない。


「まずはSP60で取得できるスキル……ああもうっ! 走りながらだとよく見えないわね!」


 レース中なので仕方ないけど、あまり視線をそらすと前方不注意でぶつかっても文句は言えない。

 いくら上空とはいえ、視認できる高度を維持しておかないと不正になっちゃうし……そもそも、正々堂々勝負する必要があったのかしら?


「あの流星と同じスキル……アクセル・ブーストじゃ勝てないわ。他にAGIに関係するスキルは……あった!」


 そこには、欲しかったマジカル・イリュージョンとは違うけど、同じマジカル系列でAGIに関するスキルが表示されていた。



 マジカル・フルバースト

 必要SP:50


 MPを全て消費し、5秒の間消費したMPの半分だけAGIを上昇させる。

 その後、10秒間行動不能。

 ――最後の希望に、全てを託す。



「無駄にカッコいいわね! でもこれしかない!」


 そして、余りのSP10も……当然AGIに注ぎ込む!



 名前:タカマチ 職業:魔法少女

 Lv:23


 HP:430 MP:710


 ATK:30(+70)

 DEF:30

 AGI:360(+20)

 INT:140

 MND:50(+20)


 残 SP:0


 スキル:

 マジカル・フルバースト



「準備は整ったわ……次は、こっちの番よ!!」


 ゴールまでどのくらいかわからない。

 いつの間にか実況もいないし、追いかける彼も見えない。


 でも。

 彼がAGI700を越えて抜かしていったなら。


「私のMP、全てあげる……マジカル・フルバースト!!」



 ――MPを全て消費します。

 ――MPを710消費しました。AGIを355上昇させます。



 私がAGI700越えしたら、追いつけるはずじゃない!!


 その瞬間、世界が変わった。

 ……いや、正確には世界が(・・・)置いていかれた。


 加速なんて生ぬるいものじゃない。

 それほど、AGI700の世界というのは一瞬で世界を置いてけぼりにした。


「あああああああーっ!!」


 もちろん、私もホウキにしがみつくだけで精一杯だ。

 だって、まさかここまでとは予想できないでしょ!


 しかし、5秒だけというのは案外すぐだ。

 この先には行動不能が10秒待っている。



 ――3

 ――2



「流星っ!!」


 ようやく彼の背中を捉えたっ!!

 彼は運転中にもかかわらず、こちらを驚愕の表情で見ている。

 やばい、時間がない!



 ――1

 ――スキル終了。行動不能に移ります。



 スキルが終了する直前。

 行動不能になる前に、流星を抜かすことができた。

 そして同時に、アイテムを投げつけることにも成功する。



 MP回復ポーション(中)

 効果:MPを300回復する。



 こんなもの不必要! という意思表示だ。

 同時に行動不能状態へと移動しちゃったけど、無事伝わっただろうか?


 彼がニヤリ、と笑った気がした。


 私?

 ポーションを投げつけたままの姿勢で行動不能になったから、片手でホウキを掴んだ状態で10秒間…………え、勢いはそのまんまなの!?


 しかも顔も流星のほうを向いているので、正面が見えない。

 ものすごく怖いんですけど!!


「アクセ、アクセル・ブーストォォォ!!」


 流星は早速回復薬を飲み干し、私に追いつくために加速する。

 いくらAGIが一瞬勝っていたとしても、こちらは既に減速する一方だ。

 だんだんと加速してくる流星には、スキルの持続時間的にも勝てそうにない。


 せめて、ゴールまでもうすぐならっ!!


「おいっ! 前を見ろっ!!」


 え?

 すぐ後ろまで迫った流星が忠告するも、行動不能状態はあと1秒。

 動けるようになって、すぐに正面を振り返る。


 ……目の前には、茶色い壁が一面に広がっていた。


「きゃぁぁぁぁぁああ!!!」


 最後に聞いたのは、ドガッゴッシャーン!! という轟音よりも大きい、自分の悲鳴だった。




 ………………。

 …………。

 ……。




「見慣れた、天井ね」


 どうやらあまりの衝撃に強制ログアウトを食らったみたい。

 時間をみると、このゲーム機の再起動制限を待っていたら深夜遅くになってしまう。


「明日も学校があるし、今日はもうログインできないわね」


 いきなりログアウトを食らったから、レースの結果は気になるけど……あの人たちと連絡は取れないし。


 せめてフレンド登録くらいしておいたほうがよかったかしら?


「ん? 私、一体何のゲームをやっていたのかしら?」


 ――私はまだ、掲示板という存在を知らなかった。


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