スリップストリームダッシュなの!
ユニークレイド?
噂では聞いたことがあったけど、遭遇するのは初めてだ。
『廃墟の教会』って、たしか近くのエリアにある場所よね。
「ユニークレイド……ここから近いわ。いまから行けば、ギリギリ間に合うかも!」
「え? 決闘はいいの?」
「そんなことより、あと3分しかないのよ! ほら、今すぐ向かう!」
「え? え?」
まさか決闘をそんなもの呼ばわりだなんて。
それだけユニークレイドというものは貴重なものなのかな?
「おっそーい! 早くわたしについてきて!」
「ご、ごめん! そもそも、ユニークレイドってなんなの?」
私は前をスイスイとゆくデス子ちゃんの背中に尋ねる。
流星はバイクだったけど、デス子ちゃんはジェットブーツ? のようなものを履いている。
場所がわからない私を先導してくれているようだけど、まだまだ目的のエリアまでは遠そうだ。
「普通のレイド戦はわかるかしら? ユニークレイドは、突発的に場所ランダムで発生するレイド戦よ!」
「それってっ! 人、集まるの!」
本来のレイド戦は、アナウンスに従い特定の時間にログインすることで退治する敵だったような。
突発で募集制限もあるなら、今いる4人だけしか戦えないじゃないの。
「ノー、ね。突発だからこそ予想できないし、難易度も高いわ! でも、その分報酬も格段に……特に貰えるギルド報酬が美味しいの!」
「あっ」
ようやく謎が解けたかも。
少数精鋭のアジシャンズ・ギルドのレベルが高い理由。
そして、希少なギルドスキルを所持している理由。
なんてことはない。
持ち前の速さでユニークレイドばかりを狩りまわっているのだろう。
「ここにいてもし間に合わなかったら、姫様に怒られるっ!」
「えっ、急がなきゃ!!」
――私にはマジカル・フルバーストがある。
それを使えば到着はするだろう……場所さえわかれば。
デス子ちゃんとの決闘は中断したけど、最初からスキル込みなら負ける気がしなかった。
それはいい。
けど。
「……場所がわからないから、間に合うのに間に合わないってモヤモヤするわね!」
――残り1分。60秒を切りました!
――只今の人数、6人! 残り14人!
「デス子ちゃん! あと何キロ!」
「くっ、あと……ギリギリかも!」
会話している間にも、後ろから凄いスピードで誰かに抜かされた。
チラっと見えた格好から盗賊かな?
魔法職じゃないけど、速い人物もいるものだ。
――残り50秒! 50秒!
――只今の人数、6人! 残り14人!
「ご、ごめん……」
急にデス子ちゃんが加速するのをやめた。
今は慣性で滑っているだけだ。
「デス子ちゃん?」
「間に合いそうにないから、貴方だけでも先にいって」
「え? 場所わからないけど」
「あっちよ! 貴方わたしよりも速いんでしょ! わたしを置いて、早く先に行ってよ!」
それでも、彼女がブレーキをかけることはない。
多分限界まで粘るつもりなのだろう。
……死に際の別れみたいになっているのはどうしてかな?
「待つよ。私一人じゃ何していいかわからないし」
「ギルドチャットを飛ばすわ。新人に託すのは癪だけど……ギルドのためだし、仕方ないんだから!」
「わかった。でも、私はデス子ちゃんの後ろを行くね?」
「どうして……」
「後輩は、先輩の後をついて学ぶんだよ」
このゲームを開始した時期的にも、ギルドのメンバー的にも。
私が新人なのは変わりがない。
先輩のデス子ちゃんが諦めないなら、私も諦めないんだから!
と、その時。
後方から見慣れたバイクが飛び出してきた。
――赤いバイクに跨った男の顔は見えない。
――しかし、その姿だけで十分だった。
「よく言った。あとは俺に任せろ」
「っ! うん!!」
残り30秒。
先導する流星によって、途端に身体が軽くなる。
『時間がない。流星! デス子! タカマチ! スリップストリームダッシュを仕掛けるぞ!』
「ええ! ……ちょっと待って。三人?」
てっきり流星が言ったのかと思ったけど、私達は既にスリップストリームの体勢で駆けている。
二重に指示してきたのは誰なの?
――残り10秒! 10秒!
――只今の人数、7人! 残り13人!
「見えたっ!」
相変わらず流星は無口だけど、前にいるデス子ちゃんの声が聞こえた。
遠くに見えるのは、古ぼけた教会。
赤く光った魔法陣がデカデカと地面に書かれているのが見える。
それに見惚れていたのは一瞬だった。
けど、その一瞬で……前にいたデス子ちゃんが消える。
「え?」
と思ったときには既に遅し。
私自身も、どこからか伸びてきた触手に掴まれていた。
「アクセ、アクセル・ブーストォォォ!!」
「きゃぁぁぁぁぁああ!!!」
――時間になりました。
――ユニークレイド『廃墟の教会』
――10人でバトルを開始します。
……私たちは、滑り込みセーフだったけども。
……触手に掴まれた時は、本気で強制ログアウトを心配しました。
社畜さんが欠勤するほど強敵でした。
のろちゃんに憑かれるような仕事はやるべきではないですね。




