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イカれたメンバーだらけのギルドなの

 

 何度か抗議するも、私が条件を満たしているのには変わりがない。


「AGI500ないけど」

「まだ初期装備だろう。きちんと揃えれば25レベルまでにAGI500を越すことができる」


「走るの好きじゃないけど」

「あれだけ空を翔けて何を言っているんだい? うちのエースに勝てる人材なら問題ないさ」


「そもそも、あなた達魔法職?」

「そうだ。うちはいくらAGI重視でもアジシャン以外はお断りしている。でないと少数精鋭じゃなくなるからね」


 ……私が条件を満たしているのに、変わりはない。




 私の中では、

「別にデメリットもないし、パーティが組めるなら入っても良いんじゃない?」


 そんな感情と。

「もっとまともなギルドに入って、自由に空を楽しもうよ!」


 という思いがぶつかっている。


「デメリット……ねぇ」

「そんな無理してデメリットを探さなくてもいいじゃないか。気に入らなければ、脱退しても良い」

「え、いいの?」

「そのかわり、再加入まで1ヶ月の制限はある。しかし問題ないだろう?」


 制限があるのも、ギルドボーナスだけもらってすぐに脱退する輩を防ぐための仕様だ。

 ボーナスではステータスアップの他、アイテム、ゴールド、経験値アップなどの特典もあるらしい。


 でも……そこまで言うなら。

 最後に、一番気になっていたことを聞いてみる。


「そもそも、アジシャンって何なの?」

「わからないのかい? AGI……アジリティ特化のマジシャンのことだ。いやはや、常識かと思っていたのだが」


 常識? これって私が非常識なの?

 ま、なんだかんだで私に合っていることは確かみたい。


「なら、お試しってことで頼むわ!」

「本当かい? 後悔しないかい?」

「何か裏がありそうで怖いけど……まあいいわ! これからよろしく!」

「ああ。改めてようこそ、アジシャンズ・ギルドへ。申し遅れたが私はこのギルドマスターをしている黒百合という。職業はトリックスターだ」


 トリックスター?

 確かバフに関するユニークジョブだった気がするけど、珍しい職業だ。

 黒百合さんとも握手をすることでフレンド登録する。


「俺は流星。この前は良い走りだった。職業は召喚士だ」

「ええ。よろし……召喚士?」


 てっきりライダーとかだと思ったら、この人も魔法職らしい。

 でも召喚士……召喚士……ドラゴンライダーの間違いでは?


「あのバイクも召喚獣とか?」

「お前は何を言っているんだ?」

「むしろ貴方がなんなのよ」


 聞くと、あれは装備の一種らしい。

 私の縦ロールみたいな装備品だとか。



 ライディング・ホイール

 分類:足 種別:SSレア


 AGI:+200

 全ステータス ALL:-50



「え、でも私が知っている同じものは……」

「改造した」

「え?」

「改造した」

「………………」


 スケボーのような形のもの、どう改造したらこうなるのかしら?


「私はレース実況の久我と申します。これでも職業はディメンションランナーというものをやっておりまして、本来は課金アイテムでしかできないチャンネルへの放送を唯一スキルでできる――」

「あんたはいいわ」


 久我さんは知っている。

 下手に喋らせるとうるさいから早々に切り上げる。


 残りは一人の女の子。

 だけど……ランチャーってガンナーよね?

 魔法職じゃなかったはずだけど。


「わたし、死の風デスウィンド。長いからデス子でいいわ」

「物騒な名前ね! でもランチャーは魔法職なの?」

「あなたと同じ、魔砲少女よっ」

「へー、そうなの。同じ……同じ?」


 何かイントネーションがおかしかったのは気の所為かしら?

 でもま、これで皆には受け入れられたのかな?


「さて。皆は知っているが、一応君のほうからも名乗ってくれないか?」

「そうね。本日新しくメンバーになりましたタカマチと言います。職業は魔法少女で、まだ初心者ですがよろしくおねがいします」


 パチパチパチパチ。


 拍手が送られる。

 通過儀礼だとはわかっているけど、何か気恥ずかしい。

 でも、一つ疑問が残る。


「少数精鋭って言っていたけど、メンバーはこれで全員?」

「いや、あと一人いる。また都合が良いときに紹介しよう」

「そう。じゃあ早速お願いがあるのだけど……」

「何だい?」


 黒百合さんが気にしてくれるけど、彼女じゃない。

 流星のほうと久我さんを見ると、彼らも視線を感じたのかこっちを向いてくれた。


「何だ?」

「どうかしましたので?」

「レースに勝った賞品って、何かないの?」


 あの後強制ログアウトをくらったせいで、ろくな会話もできなかった。

 そもそも、勝ったというのも人づてに聞いただけなので、事実の確認も済んでいない。


「……ああ。何が欲しい」

「お金」

「何?」

「おにーさんたち、お金ちょーだい♪」


 ピシリ。

 周囲の空気が凍りついた気がしたけど、冷気の発する方向にいたのは女の子一人。

 死の風さん、凍える風の使い手でもあったのかしら?


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