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私の見た目、悪者なの?

 

 どのくらい走ったのだろう。

 やがてキィィィィィーーーー!! という耳障りな音とともに、バイクは停止した。


 気づけば、とある建物の前まで辿り着いていたらしい。

 身体に危機が迫ったり、とてつもない恐怖を感じるとログアウトされるはずだけど……よく強制ログアウトされなかったものね。


「着いたぞ。ここが俺たちのアジトだ」

「……ええ」

「どうした。降りないのか?」

「……なんか、もう疲れたわ」


 連絡を取りたかったのは事実だけど。

 どうして私、こんな場所まで連れ攫われたの?


 連れてきた本人に聞こうとしても、彼はスタスタと私を置いて建物の中へと入ってしまった。


「……ああもうっ! 行けばいいんでしょ!」


 一人悪態をついてその背中を追う。

 ……バイク、このままでいいのかしら?

 ま、まあ私には関係ないことよね!




 建物の中は意外と綺麗に整頓されていた。

 ホテルのロビーよろしく、ソファーにテーブルに、キッチンまで完備されており、まさにアジトだ。


 そこには見知った顔が二つと、知らない顔が二つ。

 全員、扉から入ってきた私のほうへ注目していた。


「ほう。彼女が噂の魔法少女かい?」

「ああ。是非とも勧誘したい」


 勧誘? 誘拐の間違いじゃなくて?


「魔法少女というからには当然魔法職でしょう。これで待望の6人目を手に入れたようなものです。そもそも! あの動画を公開しないということはこれからの私達にとっても損益が――」

「うるさい」


「うわぁ……」


 流星と久我さんはわかるけど、あとの知らない顔は女性だ。

 一人は大人の女性といった感じで、長い黒髪を煌めかせて豪華に装飾された椅子に座っている。

 近くに杖が置いてあるので、あの人も魔法職かな?


 もうひとりは私と同じくらいの女の子だけど、セーラー服のようなものを着ている。

 ……なんか、すごいミニスカートなのは気にしたらダメなのかな?

 背中に大砲みたいなものを背負っているからランチャーっぽいけど。


 そんなことを考えていると、彼らの中から黒い髪の女の人が進み出てきた。

 雰囲気からして、ここのリーダーっぽい。


「初めまして。ようこそアジシャンズ・ギルドへ」

「アジシャンズ・ギルド? 何それ」

「……失礼。そこの流星から説明は?」

「説明も何も、急に酒場に乱入してきて誘拐されただけです」

「……………………」

「オォ…………」

「お兄ちゃん……」


 三者三様の反応、ありがとうございます。

 肝心の流星は素知らぬ顔だけど、少しは反省してね?


「コホン、改めてようこそ。ここはアジシャンズ・ギルドだ。どうやら行き違いがあったらしいね」

「ここがギルド? もしかして加入してほしいってこと?」

「話が早いね。是非ともうちに入ってほしい。君ほど条件を満たした人物で、うちのエースに勝つような逸材……逃したくない」


 ギルド。

 そういったものが存在していることは知っていたけど、いきなり誘拐されて加入してといわれても……。


「あの、どんなメリットがあるのでしょうか?」

「いい質問だね。ゲームに置いてギルドというのは一種のコミュニティだ」

「説明しよう! ギルドの利点として、身内でパーティを気軽に組めたり、アイテムの融通が聞く。さらにギルドチャットを使えば離れた場所でも連絡、連携が取れ、要らない装備の処分も簡単にできる。そして何よりの利点は――」

「ギルドボーナスね」

「……妹様、それ私のセリフですよ?」


 妹様と呼ばれた女性……女の子でいいかな?

 彼女が割り込んだおかげで久我さんの暴走は止まる。

 あの人うるさいから助かったけど。


「そうだ。ギルドボーナスというのは、その通りステータスに補正が入る。ギルドレベルによってね」

「ここってそんな有名なの?」

「ま、知る人ぞ知るって感じだね。加入条件が厳しい代わりに、ボーナスもそれなりだ。ギルドレベルは10まであり、今は6だね」


 6!

 いま攻略の最先端を行っているギルドですら、8だという噂だ。

 それを考えると、このギルドって結構強いの?

 逆にこんなメリットばかりだと、怖くなってくるけど……。


「そ、そんなギルドに誘っていただいてありがたいですが、私は期待に答えられる人物では……」

「さっきもいっただろう? このギルドに加入する条件は3つある」



 ――1、低レベルでAGIが500を越えること

 ――2、見た目が悪者の魔法職のこと

 ――3、走るのをこよなく愛すること



「以上だ」

「うん、全く当てはまらないわ!」


 1に関しては、AGI500なんか越えていないし、3の走るのが好きというより、空を飛ぶのが好きだ。

 そして……。


 流星。

 極悪人のような顔をして、何を考えているかわからない。


 久我さん。

 笑顔を絶やさないけど、サングラスのせいで表情がわからない。


 黒髪の女性。

 美しい笑顔だけど、腹黒なの? なんか貼り付けた笑顔っぽい。


 セーラー服の女の子。

 目つきが悪いけど、それだけ。


 なにより。


「私が悪者に見えるって、どんな冗談よ。ハハハ」

「この中では一番悪役が似合っているな」

「金髪ドリルにゴスロリとは、やってくれる」

「あなたをひと目見た瞬間から、これはやると――」

「オーッホッホッホ! って笑って」


 どうして満場一致で悪者に見えるのよ!?


「そもそも、何で悪者の見た目が条件なのよ!」

「決まっているだろう? 速く駆けるアジシャン達が正義のはずがない。どうせなら見た目もこだわろうと思ってな」


ごめん。

何言っているのかわかんないですね。


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