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生まれ変わりだからって小学生を江戸に召喚するな。  作者: 相木ナナ
現代っ子、江戸の道場に投げ込まれる鬼修行のスタート
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気まずい風の音01

れっつ娯楽。

 あのときは、かっとしていた。



 石津を攻撃してしまったこと、そして黒宮と戦ったあとで気分は高揚してたのにひどく疲れていたこと。


 そうじゃなかったら、冷静に話せたんじゃないか。


 あんな物言いをすることはなかった。



 あのあと、どうやって帰ってきたか覚えていない。


「隼人様」



 今日は森之介は風邪をひいたと言って、出てきていない。


 昨日まであんなに元気だったのに、風邪なんて嘘なんだろう。



「隼人様」



 バンと音がして、千広が扇子で畳を叩いた音で隼人はようやく千広を見た。



「なんだよ。聞こえてるよ」



「それならようございました。駕籠の乗り方は完璧ですね?」



 今日はこれから、屋形船に乗るのだ。


 夜道は危険だから、船場までは駕籠だという。



「歩きたいのに」



「せめて二十番代まで席次があがってからおっしゃってください」



「昨日喜んでたくせに」



 千広の中での隼人の初席次は五十席だろうと、そうとう悲観した数だったようで、四十二席は上々だったらしい。



 ――頭を冷やすために、どうせなら歩きたかったのに・・・・・・。



「失礼いたします。駕籠がつきました。お乗りください」



 襖のむこうで冬二郎が声をかけた。



 結果として、隼人は駕籠酔いになった。


 人が担ぐという事は、自動車のようにスムーズにはいかなくて当然だ。

 車酔いすらあるのに、これだけ揺さぶられたら気分も悪くなるというものだ。


 駕籠によった隼人は、船に乗る前から青ざめていたので、渡し場も大人から大人にリレーされるようにして船にのせられた。


 上座に隼人、夕維ゆいにして鋭馬、佐枝、千広と乗り込む。



「兄様、お加減はいかがですか?」



「・・・・・・もうちょっと、待っていて」



 まだ口の中が気持ち悪い隼人は、屋形船の障子窓がひらていても外を見る余裕はない。



 船は築地からゆるりと出発した。



「肝心ご当人がコレですが、夕維さまがお腹がお空きでしょうからお弁当をあけましょうか」



 鋭馬がコレといったのは勿論隼人のことだが、隼人は気にせず手を振った。



「うん、食べて。俺は気にしないから」



「梅干しがございましたから、梅干しを召しあがったら酔いが治るかもしれませんよ」



 佐枝が重箱をあけた。


 芋の煮転がし、ふろふき大根、あんかけ豆腐、まつたけごはん、蒸し蛤、焼き秋刀魚。


 別の箱からはあんころもちに、筒状になった薄焼きせんべい、練り菓子なども出てきた。


 佐枝は梅干しを見つけると箸で食べやすくつぶし、種を出して隼人の口に入れる。


 その酸っぱさに隼人は目を閉じたが、しばらく口の中で味わっていると不思議と気持ち悪さがおさまってきた。



「凄い、治ったかも」



 船にのるときに仕出し屋から受け取ったという椀は、まだ温かいとろろ汁だった。


 それを腹に流し込み、芋にぱくつく。


 現代人の隼人には、やはり肉がないのが残念だった。


 江戸では鶏肉がせいぜいで、他のものは禁じられているという。


 それでも「ももんじ屋」という肉の専門の料理屋があり、そこでは猪肉なども食べられるそうで隼人は早くそこへ行ってみたかった。


駕籠酔いしている隼人ですが、けっこう江戸の人間でも駕籠酔いする方はいたそうです。

前と後ろに担ぎ手がいて、声を掛け合うことでテンポを合わせるわけですが、人力ですからね……。

駕籠の中には、電車やバスと同じで手すりがついています。握っていないと外に転げ落ちます。

大名行列的なものは前触れで声をかけるものもいて、速度もゆっくりとしていましたが民間で出回っている駕籠舁きは速度重視が多かったようです。

現代でいうところのタクシーになりますが、チップで対応が変わるあたりは海外タクシーに近いですね。

本来、秋良家の規模ですと家に専用のひとがたちが雇われています、当主はそうそう気軽にブラブラできませんので。

今回はまだ隼人がボロを出しそうなレベルであるので、千広判断で外の駕籠屋に声をかけた設定になっております。

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