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生まれ変わりだからって小学生を江戸に召喚するな。  作者: 相木ナナ
現代っ子、江戸の道場に投げ込まれる鬼修行のスタート
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次の風 05

迫力と覚悟の違い。


 何が起きたわけでもない。


 隼人は、竹刀を動かせなかった。





 小塚こづかは立っているだけだった。


 しかし、隼人が竹刀を青眼せいがんに構えてすぐ、小塚の周囲の空気が神変したのだ。



 目に見えない壁が、そこに出現したようだった。



蛇に睨まれた蛙のように、立ちすくんでしまい、汗が体中を伝う感覚だけしかない。



 時がとまったように感じられたとき、小塚が小さく息を吐いた。


 その途端、金縛りだったような力が解けて、隼人は座りこんだ。


猛烈なめまいと、とめどなくでる汗で前が見えなくなっていた。



「隼人様!」


「大丈夫ですか?」



 冬二郎とうじろう森之介しんのすけが駆け寄ってくれたのが聞こえたが、隼人はすぐには返事もでなかった。



 ――これが、剣……。



 まるで素手で包丁を握らされたような、恐怖がそこにあった。




「最初に師範代と立ち会うとは思いもしませんでした……俺だって最近なのに」


「竹刀動かせなかったの俺だけじゃない?」



 森之介と冬二郎がちらっと目くばせしたのがわかった。



「まあ、最初の最初で師範代と立ち会った人間は少ないですよ」


「師範代の強さは、別格ですから」



 きっと、一太刀くらいは浴びせられるんだろう。


 隼人はますます自信がなくなった。



「次、俺の試合ですから」


「誰と対戦するの?」


「沢田さんと試合するはずが私になりました」



 冬二郎が素早くほほ笑む。

 森之介も不敵に笑った。



「上等だ。負かしてる」


「そっちこそ。足元をすくわれるなよ」


「ふたりとも、頑張って」



 隼人はそういうのが精々だった。


 小塚はいつの間にか、他の門人を指導にいっていた。



 立ち会った間は、二時間以上だと思っていたが、現実には数分の出来事だったらしい。



 誰も隼人を気にとめた様子もなく、隼人はほっとした。



 すると、一人の少年と目があった。


 森之介ぐらいの年に見えたが、口の中でなにか言ったの聞こえた。



 ――弱虫の甘ったれ。



 ひざ下がまだガクガクしている、今すぐに逃げ出したい隼人の心境がバレたようだった。



 見たいと思っていた森之介と冬二郎の試合だったのに、「弱虫の甘ったれ」


その言葉がずっと頭の中をめぐっていて、白熱した試合のほとんどを見逃してしまっていた。



 そうだ、隼人は弱虫の甘ったれだ。

 それの何が悪い?



 隼人は現代からいきなり江戸に呼び出されてきただけで、特殊能力なんてありはしないのだ。



 ――弱虫の甘ったれ。



 そうだ、隼人は怖い。

この場からすぐに逃げてしまいたい。



 千広ちひろに叱られてるだけの、最初の頃がもう懐かしかった。




.

隼人、惨敗。そしていじめっ子の匂いがしますね。練習というか、隼人のなかではどこか部活感覚、習い事でしたね、云われたからやってるふしがありましたが、当時は太平の世とはいえ、男子が大幅に余っている時代、次男・三男などは長男とは雲泥の差があります。食べる場所も中身も違ったり、それこそお妾さんの血筋なんかだと冷遇されますね。そういう部屋すみの立場だと、婿入りが死活問題になるのです。そのためには学問か武芸が何かないと、婿履歴書として何も書くものがないわけですね。なので、気合の入り方も違うし、武士として必須のものなので、心構えが現代とは桁違いなんですよね。

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