次の風 04
居合について。
「よろしくお願いします」
「神名先生に代って代理稽古する、師範代の小塚啓十郎だ。仔細は聞いている。まずは練習を見ているとよろしいだろう」
無楽流最高の剣客といわれる小塚は、二十代だと思われたが寡黙な空気を漂わせていた。
剣士、という空気がぴったり当てはまる。
「あっちで天瀬冬二郎に稽古をつけているのが、次席の黒宮礼助だ。私の留守には黒宮が指導をまとめる」
冬二郎と打ち合っているのが、噂の黒宮か。
静寂な小塚と違い、あふれる自信が体中からみなぎったオーラが漂っている。
薄笑いを浮かべているのが酷薄な雰囲気を出しているが、二枚目といっていい男だった。
「あちらで対戦しているが、五席の泉秋太郎と、沢田伊織。泉の居合は道場一だ。よく見るといい」
対戦、といっても隼人には睨みあいに見えた。
ずば抜けて背の高い青年は小塚や黒宮より少し若そうだ。
対するほうは、やや目が大きく中背だ。
だらりと手を下げたままの長身の青年が動いた、と見るに
「一本!!」
声があがると同時に、中背の相手が飛びのいた。
「参った。泉、今のは凄いぞ」
「ありがとうございました」
長身のほうが、泉らしい。
目が大きく、すばしっこい動きをしたのが森之介の推薦、沢田だ。
「抜き打ちは、見えたか?」
「いえ、見えませんでした」
屋敷の関係者以外と話すのは、ほど初めてである。
緊張しながら返事をする隼人に、小塚は説明してくれた。
「泉は背が高い分、体にあわせた竹刀は長いものを使っている。長ければ抜き打ちは難しくなるが……」
「腕が長いぶん、抜く力があれば攻撃の範囲が広くなって沢田さんが踏み込みにくかったのですね?」
「そうだ。理解が早いな」
隼人のゲームで培った格闘に関する知識が初めて役だった。
体が大きければ攻撃される面積は増えるが、リーチが広がる。
振り下ろすときに高さでパワーがでる。
隼人はスピード勝負の女性キャラより、パワーのある男キャラが好きでよく使っていたから、原理はわかる。
「泉さんの居合は早いんですね」
「早い者だと、あとは黒宮、天瀬だな」
居合と剣術の違いについて教えてくれたのは、その冬二郎である。
居合は、構えずに対戦してから抜く。
剣術は構えをとってから対戦する。
「じゃあ、ルパンの五ェ右衛門は居合なんだ!」
説明されて、また冬二郎たちには意味不明なことを叫んでしまったが、そういうキャラがいて「つまらぬものをきってしまった」のポーズまでやってみせると森之介は感動したが「早ければ強いものではありませんよ」
と冬二郎が水をさした。
抜くスピードより、抜いてから構えることのが重要だという。
どのかまえからくるかわからないことが、居合の最大の武器なのだ。
「沢田はよく相手の動きを読む。席次は有馬や天瀬と同じくらいだが、面倒見のよい男だから頼めば熱心に稽古をつけるはずだ」
隼人もそう願いたい。冬二郎たちの席次がまず大人顔負けなのだ。
その冬二郎と対戦していた黒宮は、あっというまに冬二郎を稽古場の羽目板まで追い詰めて、電光石火の速さで籠手をふたつとっていた。
冬二郎とて弱くないはずなのに、力量差は隼人の目にも圧倒的だった。
礼をして下がった冬二郎が、黒宮が森之介のほうに向かった間に、胴着をちらっとめくって顔をしかめたのを見た。
いつ打たれたのか、肩にかけて真っ赤に腫れあがった竹刀の痕がついている。
「天瀬も巧妙に技を使う。黒宮もさすがに手加減がきかなかったか」
師範代にも見えていたのだろう。
隼人はぞっとした。
現代では体罰どころじゃない。
こんな荒稽古に自分も加わるのかと思うと、身がすくんだ。
「少し、打ち込んでみろ」
突然に、小塚に竹刀を渡されて、隼人は手が震えるのをこらえて少し素振りをした。
「そのまま、私に打ち込んでみなさい。好きにやっていい」
いきなり、師範代に!?
一方、小塚は竹刀を持ってもいない。
隼人が打ち込んだのを、ひらりとよけるんだろう、と隼人は思った。
剣と剣じゃない。
隼人は竹刀。相手は素手だ。
素ぶりは春から毎日やっている。
隼人は、深呼吸した。
――――よし。
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なんだかごちゃごちゃしてる・・・うぅ・・・悲惨!でもなおしようもない!処女作の恥はおいといて。居合とはなんぞ、の話しですね。ネタは当然ながらル◯ン3せーい。ぞろっとキャラが増えてますね・・・今のとこ、小塚と沢田さえ覚えてもらえたら。あとはいまんとこ大事ではないんで(おい)しばらく道場ネタで千広がおやすみ状態です。あと、この流派は存在していないので色んな流派の技や動きが入るなんでも流派なので、その辺はお許しください。未来からきたことを知らない人で初めて会話したのが小塚なので、けっこう頑張っていると思います。この辺のキャラは当時読んでた漫画の影響がくっきり出てて、我ながら恥ずかしい・・・読んでネタもとがバレることはない・・・と思いたい(切願