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初めての恋  作者: 神寺雅文
第四章--解き明かされる過去
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解き明かされる過去24

「拓哉君を悲しませる人を、私は好きにはなれない。どんなことが合っても拓哉君を信じるのが本当の友達だと思う。たとえ“約束”を忘れてしまっても」

「……春香。そうね、例え約束を忘れてしまったとしても、大切な友達を信じてジッと待つのが本来の友達ってやつね。ましてや、その人が本当に自分にとって大切なら、尚更私は待ち続ける、何年経ってもおばあちゃんになっちゃっても私は待ち続けるもの」

「うん、私もずっと思い出してくれるのを待つ」


 二人は仲が良く、同じ意見になることは薄々感じていたが、ここまでハッキリと同意見を持っているとは思わなかった。それに、なぜか二人は僕の顔をジッと見つめたまま、どこか悲しげな瞳をしている。春香に関しては泣いているんじないかと思えるくらい、瞳が潤っている。


「もちろん、それは分かっているよ。でも、拓哉はこのままじゃイケないんだよ。サッカーを辞めたら拓哉は拓哉じゃいられない……」

「どうして、雅君がそこまでしてあげるの? もちろん、私も拓哉君は好きだしどうにかしてあげたいよ? でも……みや……雅君を苦しめる人達に私は会いたくない」

「拓哉が居たから、僕は春香とここまで仲良くなれた。拓哉が居たから僕は春香と水族館にも行けたしもっとたくさんのところに遊びに行きたいと思えるようになったんだ。拓哉が僕ら、四人の間をつなげてくれたのは確かだよ。その繋がりをくれた大切な友の為に、何かすることは間違いじゃない!」


 理屈じゃないんだ。魂の問題だ。思わず口調に力が籠る。


 春香が言うように好き嫌いで物事を判断していいのなら、僕の拓哉への気持ちの方が、あいつらを嫌う心より遥かに大きい。だから、僕はどんなに苦痛を味わおうが嫌がらせを受けようがあいつらと真っ向から向き合う。それが男の友情なのだから。


「だから、協力してほしいんだ。二人のことは何が起きても僕が守る。だから、拓哉の為に二人の力を貸してほしいんだ」

「どうする春香、みやび本気だよ? きっとこのまま一人で無理し続けるの目に見えてるよ?」

「……、ホント雅君は拓哉君のこと大好きなんだね。うん、いいよ私も協力する」


 奈緒は半ば呆れたのだろう。春香は春香で苦笑いを浮かべて頷いた。


 それでも二人は協力を買って出てくれた。二人の顔が少しだけ明るくなったのは、少しだけ問題解決に進んだからかも知れない。


 奈緒がご主人様の命令を待つワンコの様に指示を仰いでくる。


「どうしたらいいのよ」

「ある人物を明日、学園に探しに行こうと思う」

「ある人物って?」


 それは内緒である。なぜなら、僕だってあの人が誰なのか知らないのだ。あえてその人物を表現するのであるならば、仙人と呼ぶのがベストである。


「まあいいわ、なるようにしかならないでしょうね」

「私、優香さんに早く会ってみたいな。きっと素敵な女性だよ。ね、奈緒?」

「なんであたしに聞くのよ」

「え~だって、同じ幼馴染でしょ? 気持ちが分かるんじゃないの?」


 不敵に笑っているのは春香である。まるで悪戯っ子のような笑みを浮かべて返答に困っている奈緒に幼馴染の心境ってのを問うている。


「べ、別にあたしは、早く戻ってきてほしいとか、ずっと一緒に居たいとかおもってないし……」

「ふ~ん、そうなんだ? いいのかな~その幼馴染がどこかに行っちゃっても?」

「ダメ!……、あ、いや、その、友人関係は大事にした方が将来のためよ。雅も気を付けなさいよね」


 何に気を付けろと言うのであろうか。春香の小悪魔的な一面にこれ以上恋心を奪われるなってことか? 安心してくれ、もうすべて奪われた。見事な強奪である。奈緒を手玉に取ることが出来るのは春香だけであり、そんな一面を見れるのは僕や拓哉だけであろう。


 そう思えば、尚更この心地良い居場所を作ってくれた拓哉を助けなければイケない言うもんだ。奈緒よ、顔を赤くして僕を見ている場合ではないぞ。奈緒もしっかり拓哉の気持ちを考えてやってほしい。


 拓哉の奈緒への気持ちってやつは本人に伏せてはいるが、いつか決着をつけるべきであろう。拓哉が関係を変えたいと言っていたのは、きっと男女の関係を凌駕した範囲のことなのであろうから。優香さんを好きだと言いのけたくらいだ、きっと何か別の想いがあるのであろう。


「じゃあ、明日の午前十時に駐輪場集合ってことで」


 明日もサッカー部は練習をしているし、我が学園はマンモス校が為に年中無休で開いている。あの入部届が正しければ、一通りの問題は力技で解決できると思う。


 ただ、問題なのはやはり拓哉が試合に出れるかである。


 一抹の不安を抱き公園から出ると春香が夕日に輝く瞳を再度公園に向けた。


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