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初めての恋  作者: 神寺雅文
第四章--解き明かされる過去
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解き明かされる過去19

「誰が言ったんだ? 拓哉の怪我が俺の将来をつぶすって? 誰が言ったんだ、拓哉がいないサッカー部で選手権目指したいって? 誰が言ったんだ、ケガしたから辞めろって?」

「……ぎぶぎぶ!」 


 タップしても辞めるわけがない。こちとら怒っているのだ。拓哉の自分勝手な憶測でたくさんの人が辛い思いをしたことに。拓哉が誰も頼らず自分だけで生きている様な言動をするのが。拓哉に頼ってもらいたいから、僕は怒っているのだ。


「なんで、僕を頼らない。苦しいのなら、僕を頼れよ! 僕だって拓哉の為ならなんだってするぞ? 今だってサッカー部のマネージャーやってんだ、少しくらいはサッカー部の為に何かさせろよ」

「なんで、お前がそこまでしてくれるんだよ。あいつらは春香ちゃんの弁当にひどいことしたんだぞ?」

「それは、すげームカついてるよ! いまでも殴れるチャンスあるなら殴りたいが、あいにく奈緒にらしくないと言われた。だから、逆に今は拓哉たちの問題を解決させて春香に頭を下げさせたい。そっちの方が大人だろ? そうすれば、拓哉もあいつらとまたサッカー出来るし」

「そうだな、でもな、俺の膝をもう元には戻らない。それだけは確かだ」

「どうしてそんなこと言えるんだ?」


 頭を垂れ、右ひざを庇うように歩き壁にもたれ掛かる拓哉の顔に悲壮が漂う。


「有名な外科医に見てもらったんだよ。そしたら、長い選手生命には致命的なケガだって言われた。もう、諦めた方がいいって……」

「長くないだけだろ? そんなので辞めてもいいのかよ? 約束したんじゃないのか寺嶋達と?」


 僕がどれだけ無責任なことで拓哉を責めているかは分かっていた。分かっていたが、友として拓哉には約束を簡単に破る男になってほしくなかったのだ。


「選手権に出て優勝する。確かにそう誓ったよ。でも、俺はもうあの頃の様には動けないんだよ!」

「拓哉……、泣きたいなら泣けよ。僕がいつまでも付き合ってやるから」

「ばか、これじゃ俺たちが同性愛者みたいじゃねーか」

「たまにはいいだろ男同士で慰め合うのも」


 酷だとは分かっていても、拓哉の本音を聞きたかった。その上で僕は拓哉にありったけの優しさと温もりを伝えるべく、体育会系には不釣り合いなほどに疲弊した拓哉を抱きしめた。いや、ホント、教室でしたら絶対に周囲から悲鳴が上がることは必至だろう。


「本音を聞かせてくれよ拓哉。僕は拓哉のためにならなんだってするからさ、もう一度サッカー部に行かないか? きっと、このままじゃ拓哉も寺嶋達も前に進めないぞ?」

「でも、俺はもう裏切者だってあいつら……」

「あんなのその場のノリだ。僕だってもし拓哉が問題を解決してないのに自分の知らない場所で勝手に楽しくやろうとしてたらカッとなって言ったかもしれない。大切な約束があるのなら尚更」


 それにさ、と拓哉から体を離し満面の笑みで付け加える。


「拓哉のことが大好きでもっと一緒にサッカーやりたくないと、あんなこと言わないよ。むしろ、もう顔も見たくないし言葉だって掛けたくない。わざわざ自分から嫌な思いをすることをしないよ。あいつらがここまで執拗に拓哉を責めるのは、それだけ拓哉に戻ってきてもらいたい気持ちがあるからだ。要は愛情の裏返しってやつ」


 そこまで言うと拓哉の辛気臭い表情が柔らいだ。


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