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初めての恋  作者: 神寺雅文
第四章--解き明かされる過去
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解き明かされる過去01

 クラスメイトがGW中に拓哉に何が起きたかなんて知る由もなく、特に女子が心配そうにムード―メーカーの様態を福田先生へ質問していた。


「すまん、詳しいことは分からない」

「分からないって先生担任でしょ? 親御さんに聞けばいいじゃないですか~」

「いや、最近は何かと個人情報がどうとかで第三者には教えられないんだよ」

「なにそれ~私たちは他人だって言いたいんですか」

「そうではなくてだな」と、大人の事情を察しない教え子に福田先生は困惑してしまっている。昨今、個人情報保護法なるものが施行され、うかつに個人情報を何かと矢面に立たされることが多い教育機関が漏洩させたらどうなるかなんて、子供の僕にでも分かる。が、女子が聞かなければ僕が問いただそうと思っていただけに、出鼻を挫かれてしまった。

「みやび、なんか聞いてないの?」

「……、私のお弁当のせいで拓哉君入院しちゃったんだよね?」

「いや、僕も何も知らないんだ。春香が気に病むことはなにもないよ。拓哉はそんなに軟じゃない」

「そっか……」


 春香の様に食あたりを気にしたところでそれが問題で入院したとは考えにくい。現に同時期に同じモノを拾い食いした僕がこうしてピンピンしているのだ。体の作りがしっかりしている拓哉がよもや食あたり程度で入院するとは思えない。そもそもその程度なら、音信不通になることなどあり得ないのだ。


 予め開いていた僕のスマホ。既読すらつかない起動画面に皆が視線を落とす。


「ごめんね、みやび。私がちゃんと拓哉君の気持ち考えてあげていれば……」

「……、拓哉から話は聞いてるよ。奈緒の過保護も度を超えてるとは思うけど、あれはどう考えても向こうが悪い。拓哉がいなくても僕らは最初から狙われていた」


 思い出しただけでも怒りがこみあげてくる。思わずまた握りこぶしになってしまう。


「暴力はダメよみやび。あんたらしくないわ」

「でも、あいつら、本当に拓哉と同じスポーツマンなのかよ! あり得ないだろ!」

「それはそうだけど」

「奈緒は我慢できるのかよ? 拓哉のことあれだけコケにされて、奈緒は黙っていられるのかよ!」――、やり場のない怒りを机にぶつける。

「出来るわけないじゃない! あたしだって拓哉君のこと大切な友達だと思ってるんだから! でも! でも……、私には何もできなかった……」


 僕の怒気に触発された奈緒の怒号に、次の授業の準備をしていた雑音、喧騒とした空気がピタリと止まった。


「すまん、別に奈緒を責めるてるわけじゃない」


 不穏な空気を察してか、そもそもそのムードメーカが不在だからなのか。教室の空気が一段と重くなる。なんとなくみんな薄々感じているのだろう。WG中に仲良し四人組に何か問題が起きたことに。


「どうしたの? 三人とも?」

「あんたたちらしくないわね。今日は拓哉のお通夜でもあるのかしら?」

「会長と千春さん、えっと……」


 クラス委員長である会長と何かと頼れる千春さんが僕らのしょげた輪に入ってきた。


「実はさ、GW中に――」


 話すか迷ったが、僕からGWのことを二人に打ち明けた。


「なるほどな。そりゃ、心配になるわな」

「ぶん殴っちゃえばよかったじゃないの。向こうが悪いんだし、暴力沙汰にして無期限活動停止にすればよかったのよそんなの」

「そんなこと拓哉がするわけない。元は同じ釜の飯食べた仲なんだよ。だから、僕を止めたんだ、あれだけ一方的に言われても我慢したんだ。膝悪くして辞めざるを得なかったって言ってたのに……」

「それに、あそこでみやびが手を出してたらきっとみやびもタダでは済まなかったはずだわ。拓哉君はサッカー部もみやびもどちらも救ってくれたんだよ」


 さすが拓哉である。普段チャラチャラしときながら、そこまで考えていたなんて想像もつかなかった。男として、もっと見習うべきところが、彼にはあるのだ。


 そんな彼に、僕も奈緒も春香だってもう一度会いたい。あんなやりきれない気持ちのまま長時間会えないなんて心が耐えきれない。どうにかなってしまいそうだ。


「じゃあ、会長として俺から一つアドバイスをやるよ」

「これは?」

「拓哉の元クラスメイトの名前とそのクラスだ。もしかしたら、福ちゃんなんかよりよっぽど使える情報持ってるかもしれないぜ?」


 机の上に置かれていた僕の大学ノートにペンを走らせた会長がそんなことを言ってそのノートを手渡してきた。


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