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初めての恋  作者: 神寺雅文
第三章--交錯する恋ごろ
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交錯する恋心27

 カラオケに行った時よりも、心の距離も体感的な距離も縮まった。これはまぎれもない事実である。着実に僕の恋心は成就へと一歩一歩前進している。


「それはなに?」

「お昼のお楽しみだよ~」


 気になっていたが、春香が小さなセカンドバック以外にも小ぶりの籠を持っている。ピクニックに行くカップルが持っていそうな大きさのやつを。それを春香が意味ありげに反対側の手に持ち替えて僕から隠してしまう。


「そっか、でも持つよ」

「え、いいよ~中身分かっちゃうから」

「そっか。でもきつくなったら言ってね」

「うん、ありがとう」


 五月の心地よい日差しの中、林道を歩く春香の姿は可憐であった。木漏れ日のシャワーを浴びる春香の横顔をいつまでも見ていたい名画の様だ。こんな子の隣を歩ける僕は幸せ者である。それだけでも、僕は満足であり、拓哉の様に今日告白する気にはどうしてもなれなかった。


 拓哉は言った「この関係を変えたい」と。


 僕はどうだ。変えたいか? この関係を。やっと話せる様になり、こうして二人だけで出かけられるようになったのに、恋人にしたいだけで告白して、最悪それがダメだったら――。


 僕はそこで考えるのを辞めた。こんなこと今考えてもちっとも楽しくない。今は春香と二人だけで街を歩いている喜びをかみしめようではないか。そうだ、そうしよう。


「私ね、今日はいっぱいいろんなところに雅君と行きたいんだ」

「どこにだって行くよ春香となら。スカイタワーだけじゃなくて近くの水族館にも行こう」

「うん! 行きたい! 私もたくさん雅君と思い出作りたい」


 春香は笑顔である。一言ひと言を朗らかに紡いで、目を細めて微笑んでくれる。

 

 僕の初恋の相手が春香でよかった。心の底からそう思える。よし、今日は僕の持ち得る能力をすべて出して春香をもてなそう。拓哉からもらったこのスケジュールもあることだし、全力で楽しむぞ今日という日を。


 拓哉と奈緒が今どうしているのかは僕には分からない。が、僕らは拓哉の考えたスケジュールがあるお陰で何も困らず、綿密に書き出された電車の時刻、目的地での行動時間、観光地を回る順番を予定通りに歩いて回り想像以上に楽しい時間となったのは言うまでもなかった。



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