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初めての恋  作者: 神寺雅文
第三章--交錯する恋ごろ
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交錯する恋心25

 僕はその提案を快諾した。もちろんである。


「みやび、がんばりなさいよ。あたし、応援してるから」


 その声は、昔から知る幼馴染のモノである。僕が一番信頼している女の子の声。ずっと近くにいた女の子の声。聞けば元気になる魔法の声なのだ。

 

 奈緒は言った。「私のこと忘れないでね」って。もう一度言うが、忘れるわけがないだろ。この底抜けに元気で、聞いた者に活力を与える太陽の声を。

 

「任せろ! 奈緒も拓哉と楽しめよ」

「うん。ちゃんと報告しなさいよね~」


 きっと奈緒がいなければ僕は春香と友達になることはできなかったと思う。ましてや、二人で出かける事なんてもってのほかである。


 電話口で眠そうな声色で僕を激励する幼馴染に、僕はありったけの感謝の気持ちを込めてお礼を伝え通話を終了させた。


 本日は晴天。まさにデート日和なり。男――雅、本日想い人とデートして参ります。あわよくば進展させてみせまる。もしかしたら……、なんてこともあるかもしれない。それはデートが始まってからのお楽しみであり、予定時刻まで二時間もある現時点では、どうなるかなんて見当もつかない。でも。今日、何かが動く気がする。


 恋に浮かれる心にかすかな違和感を覚えつつも、僕は生まれて初めてのデートに向けて準備を始め、春香を迎えに行くためにバスに乗ったのは待ち合わせ時刻の一時間前であった。


「雅、頑張れよ! 春香ちゃんには俺からも説明しておいた。今日は雅が春香ちゃんをエスコートするって。一応、俺が考えたデートプランを伝えるからそれを参考にしてくれ」


 そう、拓哉からラインがきて今日のスケジュールがこと細かく記されていた。デートプランなど考えたことがない僕としてはすごく有り難くそのまま使わせて頂くことにした。


「俺が考えたって春香ちゃんにはいうなよ? あと、俺と奈緒ちゃんのことは気にせず、最後の合流場所は来れたらでいいから」


 来れたらで良いとはどういう意味だろうか。バスに揺られながら一考する。


 合流場所は夕方五時に桜ノ宮スカイタワー4F正面エントランスである。そこから四人で晩飯を食べに行く計画だと言う。が、“来れたら”となっている。これない理由とは? 


「カップルになれたら、そのまま二人でどこかにいけよ。そこからはお前の判断に任せるもちろん、夜の仲良しこよし――」


 まあ、そう言うことらしい。奈緒もその辺を考慮していたが、僕が春香に告白する可能性は極端に低い。なぜなら、そんな度胸がないからである。単純明快でしょ?


 車内のアナウンスが春香ん家の最寄りのバス停名を告げる。


「拓哉はどうするんだよ?」

「俺は、まあ、するつもりだ。覚悟はできてるからな」


 GWを楽しむ家族連れの楽しそうな声が溢れる車内で、僕は携帯を見つめてやるせない気持ちになってしまった。


「僕は、まだできないよ。自信ないし」

「自信か。確かに俺もないよ。でも、言わないと変わらない関係ってのもあるんだって気が付いた」


 吹き出し形式で言葉が表示されるせいもあり、いやにポップで軽く見えてしまう拓哉の文面。


「俺は変えたいんだ。今の関係を、じゃないと俺が前に進めない気がする」

「どういう意味だ? 言ってることが分からない」

「いつか話す。きっと雅には言った方がいいと思うから」


 そのメッセージが最後であった。それに僕が「今でもいいじゃん」って返信したが既読がついただけであった。


「あ、雅君!」


 停留所に着きバスを降りると待ち合わせ一時間前だと言うのに僕を待っている女の子がいた。


 その子は全体に刺繍が施された純白のレースワンピースを身に纏い、頭には青いリボンが取り付けられた白いつば広帽を被っている。誠に、良家のお嬢様と言った様相である。漆喰の様な艶のあるロングの黒髪と全身の純白が相まって余計に彼女の清楚感が際立っている。そう、彼女はもちろん春香である。


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