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初めての恋  作者: 神寺雅文
第三章--交錯する恋ごろ
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交錯する恋心05

「奈緒は、奈緒はどうなんだよ?」


 話しは戻るが、僕らの関係について今度は僕が質問を返す。

 すると、お腹に回る腕に少し力が入ったような気がしてから奈緒はそっと僕の背中におでこを当てて言った。


「あたしは今幸せなんだ。ここにこうしていられることが。他には何もいらない。これが答えよ、ダメかな?」

「お前に言い寄る男は多いだろ。今もきっとこの中にいるかも知れないぞ? 僕にいい気持ち抱いてない男が」


 誰が誰としても目立つ自転車の二人乗りだ。しかも、高校生の男女がなんとも仲良さげにさも恋人同士ですよって言いたげに、密着しているのだ。僕なら間違いなく殺意を抱くだろう。リア充死ね! 爆ぜろ! と心の中で大絶叫するに違いない。ましてや、それが意中の女の子を奪われたってなると尚更である。


「そんなの分かんないわよ。みやびはあたしの事、買い被り過ぎ。別にあたしはモテないわよ」

「いやいや、噂は聞いてますよ。新学期始まってからもう二十人には告白されたんだろ?」


 交差点では右折レーンで待機していた車が続々と新しい流れを作り遠ざかっていく。そろそろ歩行者信号も変わるころ合い、僕は奈緒の返答を待ちつつ走り出す準備をする。


「大切なのは回数じゃない。誰に告白されるか……だよ。バカ……みやび」

「え、なんて言った?」


 歩行者信号から鳴り響く「ぴよぴよぴよ」って効果音のせいで奈緒の力ない返答が聞こえなかった。だから、走り出そうとした力と止まる力が均衡して前のめりになってしまった。


「恋人いないんだからあたしもみやびも変わらないって言ったのよ!」


 急ブレーキが不快だったのか振り返った僕の両頬を両手で挟む奈緒。なんか怒っているようだ。


「ほら、通行の邪魔になるからささっと出発!」

「へいへい、お転婆娘さん」


 腑に落ちないが奈緒がそう言うのなら、恋人がいない僕らは同じカーストなのだろう。どう考えても奈緒と僕との「恋人いない」には大きな違いがあるように思うのだがね。それついては奈緒が追及を許さなかったので仕方なく歩行者の流れに乗って自転車を学園へと向かわせることにした。

 道中そんなやり取りをしつつ、学園が見えてくると前方に自転車を漕ぐ春香を奈緒が見つけ「ほら、想い人だよ」ってからかわれた。言われなくても気が付いていたさ、深呼吸して気持ちを落ち着かせていたところだ。


「やっほ~春香!」

「あ、雅君と奈緒、おはよう」

「おはよう、は、春香」

「うん、おはよ~」


 準備万態、呼吸を整え春香の脇に自転車を進め、今日も穏やかに微笑む春香の名を呼べた。それに対し、春香も満足そうに笑みを咲かせてくれなんだか照れくさい。昨日夜遅くまでラインをしていたこともあり、僕たちの関係が発展したことがことさら実感できて胸が高鳴る。苦しいくらいにだ。

 大事なことだからもう一度言うが、昨日の夜、僕はこの子と寝るまでずっと互いの時間を相手の為だけに使い合った仲になったのだ。そんな関係になれたんだ。そう改めて思うと天にも昇りそうになってしまう。


「二人はいつもそうやって登校するの?」


 自転車置き場に着き、奈緒の鞄を籠から取ってやると春香に疑問を持たれた。


「え、まあ、いつもではないけど」

「まるで、恋人さんみたいだね?」


 ほう、まさか春香にまで言われるとは思わなかった。僕も奈緒も豆鉄砲食らった鳩のような顔をお互いに向けている。


「ちょっと~、春香なに変なこと言ってんのよ? あたしとみやびが恋人みたいだなんて」


 あからさまに動揺する奈緒。そっちはそっちで何回も周りから質問されてきたんじゃないのか? 今更何を慌てているんだ。


「そうかな? 私は別に変じゃないと思うけど? 二人はお似合いだもの」


 おやおや、このセリフ、どこかで聞いたことあるぞ? 昨日は春香と僕がお似合いだと誰かさんが言っていたような。その誰かさんは、動揺し過ぎて顔が真っ赤である。


「み、みやび! あんたからも訂正してよ! あわしとみやびはそんな関係じゃないって」

「そうだよ春香。僕らは別に単なる幼馴染なだけで、恋人とかそんなんじゃないから!」


 言ってて悲しくなるのはなぜか。別に奈緒は嫌いじゃないし、この関係をこんなにも真っ向から否定することが悲しくてたまらないんだが。


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