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初めての恋  作者: 神寺雅文
第三章--交錯する恋ごろ
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交錯する恋心02

「……、自分の気持ち伝えたの……?」


 ついにベッドの縁に脹脛がぶつかったと思ったら、奈緒は僕の胸に手を当てるとちょっぴり寂しそうな表情をした。きっと寵愛する弟が旅立つ時に、こんな顔を全世界のブラコンなお姉ちゃんはするんじゃないだろうか? なぜか、奈緒はそんな表情をして僕の目をじっと上目使いで見つめている。


「いや、今はこれが限界だよ。でも、きっといつかはこの想いを伝えたい」

「もしさ、もしもだよ? 上手くいかなかったら?」


 一歩下がった奈緒は顔を上げる事なくそう言った。


「そ~だな~、正直さ、自信はないよやっぱり。拓哉みたいにいかしたことが言えるわけでもましてやさ、かっこいいわけじゃない」

「そんなことないよ? みやびなら大丈夫」

「どうして?」

「だって、みやびはみやびだもの。あたしが保証する。みやびなら大丈夫」

「それって答えになってなくないか?」


 僕なら大丈夫って、僕だから不安なんだよな。その辺、奈緒と僕の考えには違いがある。


「みやびってさ、自分に自信ないみたいだけど、とても素敵なところたくさん持ってる。自分を見失っちゃだめ。きっと大丈夫だからさ」

「まあ、奈緒がそう言うなら大丈夫な気がするよ。僕には勝ち目ってどのくらいある?」

「ん~、勝ち目って?」

「いやさ、歌を誰かに教わったって言ってたじゃん? きっと春香その人のこと意識してるよね」

「ああ、その話ね。あたしもいまいち分からないんだよね~その人の事」


 奈緒が何の気なしにベッドへ腰を掛けたので僕もその隣に座る。


「春香と高校で同じクラスになったのは今回が初めてだし、まだ私も会ったことないの」

「男だよね?」

「まあ、今回のカラオケで見たあのノリからして、男性ってのは確定じゃない? それも同年代」


 僕の十八番についてこれたのだ。きっとその男もパンクロックをこよなく愛するロッカーなのだろう。それも、春香にあんな表情をさせるくらい、春香にとっては身近な存在なのだろう。やっぱり勝ち目があるとは思えないのだが――。


「でもさ、最近話せてないみたいよ? もしかしたら過去の話しってだけなのかも。ましてや、春香とどうこう言う関係じゃなかったって可能性のが大きいかも」

「喧嘩別れでもしたのかな?」

「どうなんだろ? あたしとみやびが喧嘩しても絶対そんなことにならないとあたしは思うけど」

 確かに。僕が試しに奈緒とケンカしたとしても、何日も何カ月も会話しないなんてありえない。どちらかが必ず次の日には謝っていつもの幼馴染に戻っている。つまり、春香とその男は僕らの関係とは違うということなのだろうか?


「もしかしたら、あたしたちとは関係が違うのかもね?」

「それってつまり?」

「……」


 僕より先に答えを発見した奈緒は黙り込んでしまった。


「なあ、なんだよ教えてくれよ」

「みやびさ、あたしのことどう思う? あたしたちの関係は?」

「はあ? なんだよ急に。どう思うって聞かれてもなんて言っていいか分からない。言えることは僕たちは幼馴染ってことだな」

「春香たちはそうじゃなかったってことじゃない?」


 何かのトンチだろうか。僕と奈緒との関係とは違い、喧嘩したらなかなか修復が出来ない関係ってなんだろう。これでも頭をフルに使っているが全然検討もつかない。


「あ、拓哉君からだ。じゃあみやび、あたし帰るね」

「なんだよ、もう帰るのか? てか、何しに来たんだよ」

「別に、意味なんてないわよ。幼馴染なんだから気まぐれで来たってかまわないでしょ?」

「いや、そうだけど、奈緒が急に来るなんて珍しいから」


 奈緒も僕と同じくカラオケ帰りからずっと拓哉とラインをしているようだ。スマホをポケットから取り出すと手早く文章を打ち窓辺へと歩んでいく。


「二人の関係に進展があったか気になっただけだよ。言ったじゃん応援するって、だから気になって来ちゃったの。もしかして、迷惑だった?」

「迷惑な訳ないだろよ。奈緒が来るなら駅前のケーキ屋でモンブランケーキ大量に買ってもてなしてやるよ」

「ふふ、ありがとう。やっぱりみやびなら大丈夫だよ? 自信もっていいよ」


 奈緒の好物が昔から駅前の洋菓子店に売っている特大のモンブランケーキであることを知っているのは、奈緒の家族と僕くらいであろう。毎年12月25日の奈緒の誕生日にはそれを買って奈緒の家に押し掛けるのが、僕の毎年の恒例でもある。クリスマスに毎年奇抜なサプライズをされては奈緒も苦労していると思うがそれはしかたないことた゛。それを思い出してか奈緒は、嬉しそうに笑いまた僕の前へと歩いてきた。


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