告白の先に見えたあの日の約束100
「じゃあ、明日からもよろしく!」
突発的に始まったミュージックビデオ制作。すっかり制作スタッフに組み込まれた僕と奈緒は、戸惑う間もなくしっかりと役割を振られた。当然僕はカメラマンであり、奈緒は演者である。演劇に興味があることを春香からバラされてしまい、必然的に登場人物の一人に抜擢されてしまった奈緒。僕なんかよりも重要なポジションだ。恨むならその星に生まれた自分を恨むんだ。
「なによ、あたしが出演することがそんなにうれしいの?」
「ああ、だって言ったろ? 奈緒のことも撮りたいって? 僕だって奈緒の演技する姿を見たいんだ」
「そっか、ならいいわ。そのカメラでしっかりあたしの雄姿を撮りなさいよね」
「うん」
照れくさそうに笑う奈緒の横顔を、貸し与えられた某メーカーの一眼レフで覗き見る。ファインダー越しで初めて見る奈緒のそんな表情に、少しだけ鼓動が早まる。まて、相手は奈緒だ。何を緊張しているんだ。
「で、デートプランはどうなってるのかな?」
「え、ああ、任せろ! そっちも絶対上手くやるから」
「両立は大変よ? 大丈夫?」
「楽しいことだ、大変なもんか」
カメラを構えたままはにかんでみる。
「なにカッコつけてんだか。まあ、いまのみやび、ほんと楽しそう。こっちのほうがあたしも好き」
「ど、どういう意味だよ?」
「へへ~んだ、内緒だよ~」
あっかんべーをしてそのまま走り出す奈緒。どっちが楽しそうかわかったもんじゃない。奈緒って楽しそうだ。
すっかり暗くなった沿道を僕と奈緒はそうやってはしゃぎながら帰路に着く。僕と奈緒がこんな感じなのだ。僕らとは帰り道が反対のもう一組の幼馴染コンビも同じようなやり取りをしてきっと帰っているのだろう。絶対に、後悔だけはしたくない。
もう少しで梅雨が明ける。初夏の香りが強まること肌で感じつつ、時はゆっくりと決戦の日へと流れて行くのであった。




