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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束78

 運が良いのか悪いのか。子供達がお昼寝から覚める頃には、梅雨の晴れ間、気温が急上昇して園庭が辛うじて使えるまでに乾いていた。


 園児からして見れば一週間以上ぶりのお外遊び。おやつもそっちのけで男の子は竹馬だったり三輪車を引っ張り出し、女の子はブランコや砂場へ猪突猛進、腕白ボーイは親の仇とでも遊ぶかの如く激しさで園庭を所狭しと飛び回っている。


 無論、僕も駆り出された。否が応でも参加しなくてはいけないらしくトモ君に手を引かれ鬼ごっこの鬼役に任命された次第。僕からして見れな彼らの方が子鬼ともいえる傍若無人さで好き勝手にやられている。が、ここは経験の差だ。大人として完膚なきまでに全員をひっ捕らえてやる。


 子供たちはまだケードロ(警察と泥棒)を知らない様であるが、自分達でそれっぽいルールを作り今までやってきたに違いない。僕に捕まった園児は自分からジャングルジムと言う檻に収容され「キーキー」と悔しそうに騒いでいる。


 仲間が残っていれば助けてもらえるって言うルールを教えてあげても良いが、十も二十人もいる園児を僕一人で捕まえるのは無理であるから、ここは黙っておくことにした。


 が、どこの誰かも確認するのもばからしい事に、陰に隠れていたラスト一人が仲間の脱獄に成功したらしい。園の裏側で泥棒役の園児を探してた僕の耳にも「みやびせんせー! 早く僕らをつかまえてー!」って楽しそうな声が聞こえた来たところだ。


「よお、ダメじゃないかちゃんとしたルールを教えないと。さあ、ほら、警察さんみんなを捕まえないとな」


 急いで裏口から表へ駆けてきた僕にそう声を掛けたのは、やはり朋希であった。こいつがいらんことを子供達に吹き込んだのはその不敵な笑みを見れば一目瞭然だ。見るからにインドア派のやりそうな陰湿な行為、自分は参加していないからって余計な事をしやがって。ここは言い返してやろうとしたがそれより先に春香が朋希の肩からギターを強制的に引きはがしこう言った。


「今日の二人はみやび先生とともき先生コンビなんでしょ? なら、朋希も一緒にみんなと遊ばないとだね? ね、朋希そうでしょ?」

「あ、え、でもだな……俺はあまり走るのは……」

「お願い。みやちゃんと仲良くなる為にも頑張って。それとも、やっぱりダメ? 仲良くなれない?」


 くっ、っと喉を鳴らしたのは朋希である。言い返すにも春香にこうも言われこんなチワワな目でお願いされては断らることなんて出来る訳もない。苦虫を噛み潰したように表情を曇らせた朋希が、頬を叩くと大きく息を吸い僕へと向き直る。


「一時休戦だ。今はみんなを捕まえることが最優先事項。決してお前を認めたわけじゃないからな」


 そう言いつつも手を差し出してきたので握手をすることにした。


「さあ、みんなが待ってる行くぞ――」


 敵対する二人の共闘戦がここに開戦。園庭へと散る二つの影を春香が微笑んで見送ったことを僕らは知る由もないが、春香なら応援してくれていると二人とも心の内で思っていたのであった。


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